「#障害者という言葉」

異彩を、放て。」をミッションに掲げ、福祉を起点に新たな文化を創るヘラルボニーはブランド初となる意見広告を、2020年2月21日(金)から2月25日(火)までの間、東京・霞ヶ関駅B1出口近傍の掲示スペースで掲載した。「ダイバーシティ&インクルージョン(Diversity & Inclusion)」という考え方が社会に広がり、人種・国籍・性・年齢などの多様なバックグラウンドを認め、人材や組織開発に活用する企業が増えるなど、ソーシャルムーブメントとしての動きが近年活発になりつつある。だが、その一方でヘラルボニーが事業を展開する「福祉業界」には、いまだに強い偏見や誤解が根強くある。

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誰かを責めるわけでなく、偏見が根強く残り続ける社会やその仕組みそのものに問題があることについて、対話のきっかけをつくれないか。そう考え、福祉を軸とした社会実験を通して「知的障害」のイメージを変えることに取り組んできたヘラルボニーは、「障害者」を取り巻く先入観を取り除くべく、「#障害者という言葉」という広告を掲載した。

ヘラルボニーが企業のミッションとして掲げる「異彩を、 放て。 」を達成するには、ヘラルボニーだけではなく、多くの人の力や仲間が必要となる。「障害者」を取り巻く先入観を取り除き、一人ひとりの「個人」に光があたる多彩な社会を目指し、ヘラルボニーは今後もアクションを行っていく。

「知的障害」を巡る表記の変遷について

日本国内において、現在では「知的障害」で表記されることが一般的なこの言葉は、19世紀後半から現在に至るまで、様々な議論のなかで以下のような変化を辿ってきた。

「知的障害」を巡る表記の変遷
  • 19世紀後半頃:「白痴」
  • 20世紀~:「精神薄弱」
  • 20世紀半ば~:「精神遅滞」 

1982年の国際障害者年を契機に、法律内での「白痴者」の使用は改められる。 20世紀末~21世紀:「精神薄弱」などの表現は障害の実態を適切に表したものではないという議論から、「知的障害」という言葉が多く使用されるようになる。 このように「知的障害」を示す言葉を巡っては、様々な分野での議論を経ながら、その表記が変遷していきた。しかし、現在でもなお、その言葉には、様々な偏見や先入観が色濃く残っているのも事実である。ヘラルボニーは、この言葉が辿ってきた歴史を理解し、改めて考えるきっかけを生み出したいと考えている。

(参考文献:寺本晃久「『知的障害』概念の変遷」、高橋智,平田勝政, 茂木俊彦.「わが国戦前の精神医学領域における『精神薄弱』概念の歴史的研究 一主要な精神医学雑誌の分析を中心に」、柳崎達一「知的障害者福祉論」、小出進「『精神薄弱』に替わる用語の問題」、松井彰彦, 川島聡, 長瀬修, 編. 「障害を問い直す」)

ヘラルボニーからのメッセージ

この度、ヘラルボニーは『この国のいちばんの障害は、「障害者」という言葉だ。』をコアメッセージに掲げた意見広告を発表しました。

『障害者』。

その言葉は人を表すのではなく、社会が抱える障壁や纏う空気を表しています。「欠落」や「ハンディキャップ」などと捉える人も多くいると思いますが、それは誰によって、どのように決められたのでしょうか。今回の意見広告を機会に、改めて、この言葉に目を向け、足を止め、向き合ってほしい。そんな想いを込め、意見広告を発表しました。

これまで福祉業界での活発な議論を通じて、「障害者」に関する様々な呼称や制度が生まれてきました。今回の意見広告をきっかけに、そもそも福祉に興味がなかった方、そもそも発言する機会のなかった当事者自身が声をあげ、国民全体の対話につながることを心から願っています。

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松田崇弥、松田文登(ヘラルボニー代表・副代表)