奈良県の大自然にインスパイアされた作品を展示
県土の77%を森林が占める奈良の大自然の中に、建築家佐野文彦の作品が展示されている。オフィスや商業施設などに携わり、人工的なものの中に自然を取り込む「溶け込みながらも違和感をつくる」アイデアに定評のある彼が今回手がけたのは《関係-気配》という作品。自然界では起こりえない、直線・水平線・正方形というものを際立たせることによって、自然と一体化しながらも、どこか違和感のある、思わず立ち止まって見てしまう作品。
吉野の製材・加工業の力を借りながら完成したこの作品を土台となって支えているのは、奈良県を代表する吉野スギ。佐野はこれまでにも、吉野材の特長の一つである木目の真っ直ぐな美しさを活かした施設などを手掛けている。
作品が展示されているのは、奈良県の中部に位置する天川村。「天の国、木の国、川の国」といわれるこの村は、高い山と深い谷、透き通った水が流れる、美しい場所。新型コロナウイルスの影響で多くの芸術祭が中止になるなか、大自然に囲まれているからこそ開催が実現したMIND TRAIL 奥大和 心のなかの美術館にあわせて作られた本作品は、芸術祭の最終日である2020年11月15日(日)まで展示される。
本イベントは吉野町、天川村、曽爾村の3エリアで行われており、佐野の作品以外にも、奈良県の大自然にインスパイアされた多くのアーティストの作品を観賞できる。奈良県産の木材、特に吉野材は節が少なく、木目が緊密で真っすぐな美しい木材。木造住宅の和室やインテリア家具などに高級木材として重宝されてきた。
奈良の木は長い年月をかけて、人の手によって丁寧に育てられてきました。地球温暖化が進む中、今までと変わらず奈良の木をつくり続けることで、持続可能な素材として存在し続けることが可能。奈良県庁「奈良の木ブランド課」が運営するポータルサイト「奈良の木のこと」では、今回のイベントに展示された佐野の作品についてインタビュー記事を掲載している。