山梨県立美術館メタバースプロジェクトがプレオープン。現代美術家たかくらかずきの作品展を一般公開

山梨県が進める、山梨県立美術館におけるメタバース活用プロジェクトが始動する。始動にあたり、プレオープンとして、本県出身の現代美術作家たかくらかずきのこれまでに制作した作品を展示した仮想空間を、2022年11月30日(水)から一般公開する。本展示はPsychic VR Labが運営するプラットフォーム「STYLY」で公開され、スマートフォン、タブレット、PC、VR機器といった様々な端末で鑑賞が可能。本プロジェクトは、2023年2月末には、美術図書室を改装した体験コーナー整備、たかくらかずきの新制作作品展示、作家と協働した教育普及イベントを実施するなど、本格稼働を予定している。

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展示空間イメージ (11月30日一般公開) ©2022 takakurakazuki

メタバースプロジェクトプレオープンたかくらかずき「大BUDDHA VERSE」展 

本展は、近年作家が展開する作品シリーズ『NFT BUDDHA』と『YOKAIDO』により構成される。両シリーズともに、NFTアートによるキャラクターシリーズを発端として、物質性を伴う現代美術作品、3D彫刻、映像作品、アバターなど、様々な媒体により、マルチバース的に作品展開がされる。adf-web-magazine-yamanashi-prefectural-museum-of-art-metaverse-styly-4

それぞれのシリーズでモチーフとしている仏像や妖怪について、たかくらは、日本独自の「バリエーションの美学」によって構築されてきた「キャラクター文化」の一種であると位置づける。また同時に、「存在を信じるが触れることのできない、向こう側のものたち」である仏や妖怪を、現代における「デジタル上の存在」に極めて近いものと定義する。adf-web-magazine-yamanashi-prefectural-museum-of-art-metaverse-styly-6

このような考え方から、たかくらは仏像や妖怪を作品として現代に蘇らせるにあたり、ブロックチェーンに紐付くデジタルデータの証明技術である、NFTを作品制作の手段として用いている。NFTを活用することにより、自身の生み出す作品がバーチャル上にアーカイブされ続け、長く続く仏像や妖怪のn次創作の系譜に連なることを企図している。

また本展では、仮想空間上の展覧会場自体も、作家の制作によるものだ。自然豊かな山梨県を想起させる山々に囲まれた湖の上に、西洋のミュージアムと日本の寺院を混交させた建築物が立ち現われ、仮想現実の世界へといざなう。

『BUDDHA』シリーズ

インドから中国を渡って日本にやってきた大乗仏教は、日本の土着の神や陰陽道、修験道、神道と習合し、独自の体系を築いてきた。そのアイコンとして表象された仏像たちは、長い時間の中で、様々な姿を獲得し、表現されてきた。たかくらは、現実に存在する様々な仏像の手印や持仏をモチーフとしながら、ドット絵として大きくキャラクター造形を改変し、NFTとすることで、仏像を現代の姿へと作り直し、表現をしている。adf-web-magazine-yamanashi-prefectural-museum-of-art-metaverse-styly-3

『YOKAIDO』シリーズ

妖怪は、日本で伝承される民間信仰において、非日常的・非科学的な存在を総称したものである。人の想像力によりかたちを与えられ、古くから戯画や玩具の題材として取り上げられてきた。たかくらは、江戸時代の画家・浮世絵師で、妖怪画を多く描いた鳥山石燕による妖怪の認識が、漫画家水木しげるへと引き継がれ、平成に入ると特撮、ポケモン、妖怪ウォッチといった影響力のあるコンテンツにおける表象や概念と混ざり合うなど、その姿を進化させてきたと捉える。本シリーズでたかくらは、ドット絵を用いて、妖怪の姿に新たなかたちを与えている。adf-web-magazine-yamanashi-prefectural-museum-of-art-metaverse-styly-5

たかくらかずき プロフィール

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1987年生まれ、山梨県出身。東京造形大学大学院修士課程修了。京都芸術大学非常勤講師。3DCGやピクセルアニメーション、3Dプリント、VR、NFTなどのテクノロジーを用いて、東洋思想、特に近年は日本仏教に取材した作品を制作。現代美術、並びに、デジタルデータの新たな価値追求をテーマとしている。NFTマーケットプレイスOpenSeaにおいて NFTシリーズ『BUDDHA VERSE』を展開中。演劇集団『範宙遊泳』アートディレクター。山梨県市川三郷町ふるさと大使。

「大BUDDHA VERSE」展 開催概要

会期2022年11月30日(水)~2023年2月27日(月) 予定
会場STYLY 仮想空間(アクセスについては山梨県立美術館HPにて案内)
対応デバイスSTYLY公式HP参照