NAKAMURA KAZUNOBU DESIGN-WORKSが手がけた日本舞踊のためのインスタレーション
日本舞踊のインスタレーションアートスペース。デザインコンセプトは日本の神聖な花、蓮。日本庭園において蓮の花が咲く早朝、その池は明るい朝霧に包まれる。まるで蓮の花の香りをイメージしているような霧は、日本では深遠さを表す神聖な雰囲気を持ったもの。繊細な光と水の粒子が光をとらえて形成するミスト。NAKAMURA KAZUNOBU DESIGN-WORKSはそんな漠然とした外観のオブジェで新しいアートスペースをデザインした。
スペースを埋める「線」。無数の「線」によって生み出された、ぼんやりとした霧のような存在。 強くはじくのではなく、柔らかく光を吸収するような日本の美しさを持った線の1000以上の「行」。線のまばらさをデザインすることで、透明感のあるグラデーションが空間全体に広がる。繊細なアートワークが光に触れ、漠然とした光の姿を描き、空間を埋め尽くす空気の存在を浮き彫りにした。
昇る霧に包まれたような空間が日本舞踊を展開。 1,000本以上の線は4mm四方の非常に薄い木製の四角でできている。線は繊細な格子に取り付けられ、直径約1.0mmの金属棒で組み立てられ、天井から吊り下げられている。これらの四角い木材の平面位置や高さなどの空間ポイントは、3Dモデリング設計技術を使用して1つずつ計算および配置され、霧のような光のグラデーションを作成している。それは日本庭園の美しさを維持する庭師が、木を剪定し、まばらさや密度のグラデーションを作成して、透明度と奥行きをデザインすることにより、枝や葉の密度を調整するのと同様だ。4mm角の超微細四角材の素材は檜だ。日本では、檜は神々が住む木と考えられている。この素材は、ヒノキの森を守る間伐した木の切れ端から作られている。その結果、このインスタレーションは、ラインの数と配置を変更することにより、さまざまなスペースに合わせてさまざまな方法で開発できる持続可能なデザインになっている。
日本の空間の美しさは、もろくて弱い光によって生み出される影の陰影によってデザインされ、生み出されている。谷崎潤一郎が「陰翳礼讃」で論じたように、それは日本の宇宙の美意識でもある。言いかえれば、日本の空間デザインの主なテーマは、フォーム自体をデザインすることではなく、フォームの操作によってもたらされる効果をデザインすること。そのテーマも受け継いでいる。空から降り注ぐ線が無数に集まり、巨大な霧のような姿で空間を覆っている。ダンサーは上昇する霧に包まれる。霧がやさしく光を捉え、光によって霧の見え方が変わると、ダンサーを光に包み込まれる。光に響き、ダンサーをやわらかく包み込むような空間デザインが作り出された。
- AMP(アーキテクチャ Master Prize)2021 ベストオブベスト/展示会カテゴリー
「蓮花の匂うあたり」 - BoY(ベストオブイヤーアワード)2021 Honoree /インストールカテゴリ
「蓮花の匂うあたり」
NAKAMURA KAZUNOBU DESIGN-WORKS
中村和延がデザインを制作するアートスタジオで、インスタレーションデザインやインテリアデザインなどの空間をデザインしている。