アムステルダムの地下道に光のインスタレーション
アムステルダムのカッテブルゲル通りにある地下道に、照明のインスタレーション「Het Licht van Jan(ジャンの光)」が灯った。マティアス・オーステリクによるこのインスタレーションは、歩行者が通過するとそれに呼応して光を放ち、地下道の歩道や壁を明るく照らす。波打つように次々と照らしだされる光は、「水の都」とも呼ばれるアムステルダムの、水と共に育まれた街の歴史を彷彿させる。
Het Licht van Janは、鉄格子と広間隔で設置された照明の組み合わせだけのシンプルな構成。歩行者を感知して起動し、地下道の最も暗い箇所を灯す。壁面には、歩行者に並走するように、動きのある光が照らし出され、まるで押し寄せてくる波のようだ。地下道の両サイドの壁に3つずつ設置されたプロジェクターは、カスタムデザインされた鉄格子の間から強い光を照射している。複数の鉄格子が重なってできたモアレパターンにより、壁や地面にそれぞれ異なった光と影を生み出している。暖かみのある通常のオレンジ色の街路灯とは全くの対極にある、涼しげな白色光を用いているのも特徴的だ。
マティアス・オーステリクは、人とその周囲の環境との間に新たな関係性を生むアートワークを得意とする。デジタルテクノロジーを駆使し、訪れた人々に光や動画、音響の変化を用いてアプローチし、周囲と新たな関係性を築かせる。彼の公共スペースにおけるインスタレーションは、概して機能的。安心感をもたらし、耐久性のあるデザインとなっている。
Het Licht van Janは、アムステルダム市の委託を受け、Amsterdam Fund for the Artsの支援のもと完成。
マティアス・オーステリク プロフィール
マティアス・オーステリクは、アムステルダムを拠点に活動する、デジタルアート、インスタレーションアート、建築を主に手掛けるアーティスト。著名なパフォーマンスアーティストや神経科学者、エンジニアとコラボレーションし、様々な作品を制作。そして、観客とのコラボレーションにより完成されるのがその作品の特徴である。代表作には、インスタレーションPLPLPL.PLやBijlmer Moodwall(2009)、A Trail of Water (2020)などがある、受賞歴のあるアーティスト。Dikker + Oostrikというユニット名で、神経科学者スザンヌ・ディッカーと共に複数の学術論文を発表し、博物館やフェスティバルなどでも作品を公開している。TodaysArtとMarina Abramovic Instituteと協同で発案されたThe Mutual Wave Machineは、オランダ王立芸術科学アカデミーより、Art of Neuroscience Awardを受賞している。
「Het Licht van Jan」概要
完成 | 2021年 |
タイプ | 照明インスタレーション |
仕様 | スチール、コンクリート |
寸法 | 幅約40m |
ソフトウェア | C++ |
所在地 | アムステルダム |