リコーアートギャラリーを締めくくる記念すべき展覧会
リコーアートギャラリーは2022年12月をもって閉廊し、これまでの活動を締めくくる記念すべき展覧会として名和晃平の個展「Focus」を開催する。本展では立体プリントによる12点の新作を発表する。今回の展示は、リコーの印刷技術を通じて名和の作品の背後に存在する関係性を再編集し、UVプリントへと投影する実験的な試みとなった。星や大地をモチーフとしつつ、それらの間を結びつける力に焦点が当てられている。
名和とリコーの間で、ストレートな表現はもちろん、本来のプリンターの機能としては想定されていなかったイレギュラーな使用方法までも含めた数多くのテストプリントを制作し、その可能性を追求してきた。こうして完成した新作は、平面作品でありながら三次元性を感じさせる、彫刻的な作品に仕上がった。画面上で立体層が繊細かつリズミカルに造形されることにより、強い視覚効果や物質性があらわれている。名和は自身の創作のルーツの一つとして、幼少期の天体観測の記憶と、そこから派生した天文や物理への興味を挙げているが、これまでも重力をはじめとした「世界をかたちづくる不可視の力」をたびたび作品のテーマとしてきた。今回はUVプリントという平面と立体、版画と立体造形の中間的な質感を持つメディアを用いることで、情報と物質の境界的な存在としてこれを表現している。作品を構成する黒一色のインクの塊には星々の光やその間に働く万有引力、それを観測する人間のパースペクティブ、そして彼らが立つ大地を形成した地球の運動といった、力の無数の側面が取り出されている。
名和 晃平 | Kohei Nawa
彫刻家。Sandwich Inc. 代表。京都芸術大学教授。1975年生まれ。京都を拠点に活動。2003年京都市立芸術大学大学院美術研究科博士課程彫刻専攻修了。2009年「Sandwich」を創設。名和は、感覚に接続するインターフェイスとして、彫刻の「表皮」に着目し、セル( 細胞・粒) という概念を機軸として、2002年に情報化時代を象徴する「PixCell」を発表。生命と宇宙、感性とテクノロジーの関係をテーマに、重力で描くペインティング「Direction」やシリコーンオイルが空間に降り注ぐ「Force」、液面に現れる泡とグリッドの「Biomatrix」、そして泡そのものが巨大なボリュームに成長する「Foam」など、彫刻の定義を柔軟に解釈し、鑑賞者に素材の物性がひらかれてくるような知覚体験を生み出してきた。近年では、アートパビリオン「洸庭」など、建築のプロジェクトも手がける。2015年以降、ベルギーの振付家 / ダンサーのダミアン・ジャレとの協働によるパフォーマンス作品「VESSEL」を国内外で公演中。2018年にフランス・ルーヴル美術館ピラミッド内にて彫刻作品《Throne》を特別展示。
リコーグループ
リコーグループはデジタル変革を支援し、そのビジネスを成功に導くデジタルサービス、印刷および画像ソリューションなどを世界約200の国と地域で提供している。imagine.change.創業以来85年以上にわたり、“はたらく”に寄り添い、これからもリーディングカンパニーとして“はたらく”の未来を想像し、ワークプレイスの変革を通じて、人々の生活の質の向上、さらには持続可能な社会の実現に貢献していく。
名和晃平 個展「Focus」開催概要
会場 | RICOH ART GALLERY |
会期 | 2022年12月13日(火)から2022年12月24日(土)まで |
時間 | 12:00 ~ 19:00 |