光・不在・多層性の横断
エフィ・スピルーによる没入型インスタレーション《Luminous Strays》がイタリア・シチリア島アグリジェントの「Ex Convento Chiaramontano dei Francescani Minori」で2025年10月10日18時から開催される。本作は古代神話と自然象徴、儀礼的記憶が交錯するシチリアの文化的レイヤーに根差しながら、「見ること / 見えないこと」「存在 / 喪失」「自己と他者」の関係性を多層的に問いかける。
展示空間には黒い布と高反射テープで織られた7つのパネルが、高さを変えて吊るされている。光が当たることで初めてその姿を現すこれらのパネルは、カメラのフラッシュや光源の角度により、異なる生き物や象徴、抽象的形態が一瞬浮かび上がる。固定的なイメージではなく、視点や移動によって流動的に立ち上がるこれらの像は、観者自身の動きと関係性によって成立する。インスタレーションの中心にあるのは、アグリジェントという場所の多文化的記憶だ。古代ギリシャのアクラガスとして成立したこの地は、ローマ・ビザンティン・アラブ・ノルマンと多様な統治を経験し、それぞれが文化的痕跡を残してきた。スピルーはその周縁にある視覚的モチーフ—涙を流すメデューサ、猫の顔と螺旋状の背骨をもつ双頭の鷲、蔦と絡む跪いたライオンなど—に焦点を当て、主流からこぼれ落ちたイメージ群に光を当てる。
- Luminous Strays by Efi Spyrou. Photogr. Maria Siorba
- Luminous Strays by Efi Spyrou. Photogr. Maria Siorba
- Luminous Strays by Efi Spyrou. Photogr. Maria Siorba
- Luminous Strays by Efi Spyrou. Photogr. Maria Siorba
- Luminous Strays by Efi Spyrou. Photogr. Maria Siorba
- Luminous Strays by Efi Spyrou. Photogr. Maria Siorba
- Luminous Strays by Efi Spyrou. Photogr. Maria Siorba
もう一つの重要な要素が、詩のパネル《Sussuri Luna》である。地元詩人サルヴァトーレ・インデリカートの『Gocce d’amore』から抜き出された言葉が翻訳を介さず、織り込まれている。ここでは言葉は意味ではなく形として立ち上がり、ビジュアルとして機能する。文字を意味ではなく視覚として読むとき、そこにあるのは空間を漂うかたちであり、文化や言語の境界を超えた時間となる。《Luminous Strays》は、オウィディウスの『変身物語』における変容の精神に重なり、存在を固定するのではなく、関係性の中で生成していくプロセスを提示する。鑑賞者の身体性と感覚を通じて、多様性と共存、他者への認識と内省が静かに起動する。ここでは光が闇に勝るのではなく、互いに作用し合いながら世界の全体性を浮かび上がらせている。
- LUMINOUS STRAYS-BY EFI SPYROU-POSTER II
- LUMINOUS STRAYS-BY EFI SPYROU-POSTER I
- Luminous Strays by Efi Spyrou. Photogr. Maria Siorba (detail)
- Luminous Strays by Efi Spyrou. Photogr. Maria Siorba (detail)
- Luminous Strays by Efi Spyrou. Photogr. Maria Siorba (detail)
- Luminous Strays by Efi Spyrou. Photogr. Maria Siorba (detail)
- Luminous Strays by Efi Spyrou. Photogr. Maria Siorba (detail)
エフィ・スピルー プロフィール
アーティスト、キュレーター、研究者。ギリシャ出身。視覚芸術、空間デザイン、社会的実践を横断するプロジェクトを多く手がけ、欧州を中心に国際的に活動している。文化的記憶、多層的アイデンティティ、他者性の表象を主題に据え、テクストと身体性、素材と光の関係性に着目したインスタレーションを展開。これまでにアテネ、ベルリン、ロンドン、ニューヨークなどで作品を発表。RUNONARTの設立メンバーでもあり、アートと社会をつなぐ実験的プラットフォームの創出にも取り組んでいる。

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