イントロダクション

AR技術はスマートフォンの普及に伴って、AR技術を多くの人が使える状況になった今、様々な場所で活用されている。美術館や家具メーカーのIKEAなどは、実際に商業施設で消費者がスマートフォンを翳し、ディスプレイだけでは伝えられない情報をAR技術によって提供するために利用している。またオンライン家具ショッピングのWayfairは実際に商品を手にしなくても商品と自分の見ている現実世界をAR技術を活用して仮想空間で重ね合わせることで、より満足度の高いオンラインショッピングエクスペリエンスを提供している。このように、AR技術はその活用方法も多様化してきたと言えるだろう。

今回は「ローカルアーティスト(キュレーター)と空間、個人の壁を取り払う」をミッションに設立されたサンフランシスコ発のアートプラットフォームWescover社とGoogleのARアプリGoogle Lensがパートナーシップを組み、今年ローンチされたプロジェクト「Explore Art Outside Museums with Wescover and Google Lens」、並びにWescoverにアーティストとして登録しているニューヨーク在住のキラ・デ・パオラ(Kira de Paola)氏へのインタビューを紹介する。

アートプラットフォームWescover

Wescoverはアメリカだけではなく、世界各地のキュレーターと呼ばれるアーティストが自分の作品を登録し、一般消費者にPR、販売交渉ができるネット上のプラットフォームだ。その他のプラットフォームとの最大の違いは作品をカテゴリーごとだけではなく、アーティストの所在地からも自分の興味のあるアートを探すことができる点である。ユーザーには、ローカルアーティストの作品に出会える場を提供し、差別化・PRが難しいローカルアーティストには、より多くの人に作品を見てもらうチャンスを提供している。Wescover コーポレートメッセージ:

Wescoverはデザイン好きな人が求めている未だ知られていないアーティスト、場所、ものをつなぐ。あなたの周りにあるお気に入りのものを探しに行こう (Wescover connects the hidden people, places, and things that every design lover is searching for. Come discover the treasure around you)。

Wescover + Google Lens = 日常に溢れる素敵なアートをARを通じて体感しよう

Wescoverと同じく日常に溢れるものとユーザーをつなぐというミッションを持ったGoogle Lensがパートナーを組み、ローカルアーティストをサポートするプロジェクト”Explor Art Outside Musum with Wescover and Google Lens” が2019年6月にローンチされた。

紹介ビデオのようにユーザーはGoogle Lensアプリを使ってオブジェクトを撮影しボタンを押すとWescover上に登録されたアートであれば自動的にWescoverのサイトに繋がり、作品、アーティスト情報が確認できる。日常生活を過ごす都市だけではなく、観光としても活用できそうだと予想している。

KIN & COMPANY: スチール素材の可能性を広げるスペシャリスト

私が住むニューヨークは世界でも有数のアートの街。ここでの競争は激しいのが現実。今回はWescoverに登録する、そんなニューヨークの街に住むインテリアデザイナー、Kin & Companyのキラ氏にインタビューをさせてもらった。

Kin & Companyは、いとこの関係にあるジョセフ・ヴィディッチ(Joseph Vidich)とハイエンド・ファニチャーのインテリアデザイナーというバックグラウンドを持つキラ・デ・パオラによるブルックリンのデザイン会社。起業をした翌2017年、オンラインマガジン「Sight Unseen」で「American Design hot list 2017」に選ばれたことをきっかけにスポットライトを浴びた。彼らはスチール素材を使った家具を特徴としており、常にマテリアルの新しい可能性をリサーチ(スチール素材の酸化と緑青を明確な表面処理として開発)し、新しい価値の創造に努めている。

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Right: Joseph Vidich and Left: Kira de Paola

Kin&CompanyはAsa Pingreeと共に、彼らを含む20人のデザイナーによる作品を「NYC x Design 2019」で、ブルックリンのザ・ウィリアム・ヴェイル・ホテルの高層庭園エキシビション「Inside/Out」のキュレーションを行った。このプロジェクトは彼らにとって初のキュレーターとしての仕事になっただけではなく、また初の屋外プロジェクトとなった。

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"Inside/Out", Opening
©︎ Dwight Cassin

彼らはレディース・ウェアブランド、デュセン・デュセンのデザイナーのエレン・ヴァン・デュセンと共に製作した「Thin Check Chaiseswith Dusen Dusen」をエキシビションで展示した。これまで何もなかった高層庭園に突如として現れた「Inside/Out」は、デザイン分野の人だけではなく、コミュニティの多くの人をも惹きつけた。キラ氏は今後もこのようなローカルプロジェクトにも積極的に参加したいと話した。

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"Inside/Out", Designer Kin & Company x Dusen Dusen Chaise
©︎ Chris Mottalini

Kin & CompanyのWescoverとの出会い、今後について

Wescoverと彼らの出会いは彼らの友人経由だったという。彼らの友人にWescover関係者がおり、友人が彼らをWescoverに紹介、キュレーターになってくれないかとオファーが来たとのこと (ポートフォリオがあればキュレーターになることはできる)。担当者から彼らの会社のミッションを聞き、彼らの信念に共感したので、キュレーターとしてとコミュニティーに参加する決断をしたのだという。

Wescoverについて、キュレーター側の意見を彼女に意見を聞いてみた。「Wescoverはアーティストのネットワークを広げてくれるということが最大の特徴だと思っています。今のところ、大規模なプロジェクトのほとんどは、実際に直接、関係者と会って話をしてから決まることがほとんどですが、ネットを通じて自分たちの存在を世界に伝えられることは、普通に生活していただけでは出会えなかった人々とネットワークを結ぶ良い方法だと感じています。 Wescoverはパブリックアートやホテルの作品に適しているのかもしれません。こういったアートの多くは大多数の人に見てもらえれる機会があったとしても、鑑賞者がアーティストの情報に辿り着くのはとても難しかったから」とKira氏は話した。残念ながら、現在、彼らの作品で公共スペースに展示されている作品はないが(ギャラリーや私邸に置かれているため)、常に何か新しいことをしようと計画しているので、ぜひ彼らの新しい取り組みに注目をして欲しい。

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"Wave table" ©︎ Alexandra Rowley

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"Step chair", Kin & Company website

Instagram: https://www.instagram.com/kinandcompany