フィールドワークに基づいた現在につながる街の変化を反映した作品

宮永愛子による個展「万寿の園」がGallery & Restaurant舞台裏で、2025年8月30日(土)から10月19日(日)まで開催中。移ろいゆく時間を繊細な手法で捉えた作品を制作してきた宮永が、本展では会場となる麻布台地域でのフィールドワークを通じて地域の歴史をリサーチし、現在につながる街の変化を反映した作品へと昇華した作品を発表している。

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Photo by Ryo Yoshiya / 写真提供:Gallery & Restaurant 舞台裏 / ©︎MIYANAGA Aiko, Courtesy of Mizuma Art Gallery

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Photo by Ryo Yoshiya / 写真提供:Gallery & Restaurant 舞台裏 / ©︎MIYANAGA Aiko, Courtesy of Mizuma Art Gallery

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Photo by Ryo Yoshiya / 写真提供:Gallery & Restaurant 舞台裏 / ©︎MIYANAGA Aiko, Courtesy of Mizuma Art Gallery

アーティストステートメント

大きく変貌した神谷町。新しい街並みは、今日も華やかに賑わっている。

ふと、ここでずっと生まれ育った人にとっての「懐かしいもの」とはなんだろう、と気になった。

お話をうかがったご夫婦の答えは「ポスト」だった。麻布台ヒルズ前にあるポスト。

そのポストを見ていると、それを基準に道幅や道と店との距離など、かつての景色がふっと浮かんでくるらしい。

「この距離にラーメン屋さんがあって、そうすると、このあたりが八百屋さんだったかな」と。

今ではどの店もなくなってしまったけれど、それを聞いていると赤い懐には、見守ってきた街の物語がいくつもおさめられているように感じられた。

ポストの名前は「万寿園前」。実際に探しに行くとそう書いてあった。地味で普通のポストだった。

万寿園前。あたりにそんなお店はみつからない。お茶屋?サナトリウム?と想像はふくらむ。

万寿とは命が限りなく続くこと。またそれを祝う言葉だな、とポストを眺めながら、

ポストの見てきたいくつもの物語を「万寿の園」として、紐解いてみたいと思った。

宮永愛子

宮永愛子

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Photography by MATSUKAGE

1974年京都市生まれ、京都市在住。2008年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修士課程修了。 

日用品をナフタリンでかたどったオブジェや、塩や葉脈、陶器の貫入音を使ったインスタレーションなど、 気配の痕跡を用いて時間を視覚化し、「変わりながらも存在し続ける世界」を表現した作品で注目を集める。 

主な近年の展覧会に、個展「1900 – 2025 : souffle de lumière」(ル・クレジオギャラリー、パリ、フランス、2025)、個展「宮永愛子 詩を包む」(富山市ガラス美術館、2023)、「神戸六甲ミーツ・アート2024beyond」(風の教会、兵庫、2024)、「日本現代美術私観:高橋龍太郎コレクション」(東京都現代美術館、2024)、「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」(森美術館、東京、2023)等。第70回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞(2020)。

宮永愛子個展「万寿の園」開催概要

会期2025年8月30日(土)~10月19日(日)
時間11:00~20:00
会場Gallery & Restaurant舞台裏
URLhttps://tinyurl.com/4hfv25xu