障害のあるアーティストの才能を発信。ヘラルボニーギャラリーにて「岩瀬俊一個展」開催

ヘラルボニーは、障害のある作家の才能を披露するアートギャラリー「HERALBONY GALLERY」にて、第3回目となる原画展「岩瀬俊一展」を2021年8月7日より開催。やまなみ工房に在籍するアーティスト、岩瀬俊一が描いた原画作品の実物を展示する。今回展示される作品群のうち、8作品がギャラリーとECサイトにて販売される。adf-web-magazine-heralbony-gallery-iwase-shunichi-7.jpg

岩瀬は長年、細い水彩ペンのみを用いて、動物や植物などのモチーフを独自の装飾性で緻密に描いてきた。その殆どがモノクロームで禍々しいイメージだったが、近年では色鉛筆が画材に加わり、より色鮮やかで温度のある世界観に変化している。今回の企画展では、会期を前半と後半に分け、展示作品の入替を予定している。世界に通じる実力を持った、日本全国の作家を、岩手から発信していく。地元に根差しながら、遠く射程を構える「HERALBONY ART GALLERY」の3回目の企画展となる。adf-web-magazine-heralbony-gallery-iwase-shunichi-2

作品紹介

作品名:「ちょうちょ」(2016)

黒い背景に対して、的確にモチーフを表したシルエットが浮かび上がっている。だがその中に描かれた模様は、あまりにも平面的・装飾的で、そのギャップが岩瀬作品に一貫する魅力となっている。この作品は特にそれが顕著であり、グロテスクなまでに全身模様だらけの蝶々が、一斉に空を飛んでいる。これは蝶々には違いないのだろうが、「ちょうちょ」という可憐で無害な語感はかけ離れた、全くの別の生物だ。蝶は南極などを除いたほぼ全ての陸上環境に存在するという。過酷な環境にも貪欲に適応する、種としての蝶の禍々しさが見えてくるようだ。

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作品名:「ちょうちょ」(2016)

岩瀬 俊一(Shunichi Iwase)について

1973生まれ。滋賀県在住。2008年から「やまなみ工房」に所属。ペンを用いて人物や動物等、モチーフが決まると彼独自の視点で余白を余すことなく、紙面全てにゆっくりと描きこんでいく。彼の内向的で真面目な性格が作品にも反映され描く線の一つひとつがとても丁寧で、まるで細い糸が絡み合っているかのように繊細に描かれる。日常では、ほとんど言葉も発することなく意見を求めても、顔を赤らめながら、か細い声で一言口にする程度しかない彼の作品からは、内に秘めた思い全てが放出され、訴えかける力強さに満ち溢れている。彼もまた自己を表現する術を作品制作に見出したひとりであり、これからも彼の世界観は大きく広がっていくだろう。adf-web-magazine-heralbony-gallery-iwase-shunichi-5

ヘラルボニーギャラリーについて

日本には、世界に通じる実力を持った障害のあるアーティストが数多く存在しているが、海外のアートマーケットと比較して、国内におけるアール・ブリュット作品の市場価値はいまだ低い現状にある。ヘラルボニーは「障害のある人が生み出すものの価値は低い」という社会に残存する負のイメージを払拭したいという想いから「アート」というフィルターを通じて、作家個々人へのリスペクトが生まれる空間創出として「HERALBONY GALLERY(ヘラルボニーギャラリー)」を、岩手県盛岡市に2021年4月25日に開設。あえて地方都市にアート空間を構えることで、地域の福祉領域をカルチャー化させる「アートローカルハブ」を目指す。アーティスト「個人」に焦点を当てた企画展の周期開催と、原画作品の売買取引を可能とし、販売価格の40~50%が作家に還元される仕組みを導入。

「岩瀬俊一展」概要

会期2021年8月7日~9月12日(8月28日より一部作品を入替して展示予定)
時間12:00‐19:00
定休日水・木 ※会期終了後、展示入替期間のため1週間ほど閉廊予定
会場岩手県盛岡市開運橋通2‐38@HOMEDLUXビル4階
入場料無料