伝統アートをあしらい、機能性を備えたサステナブルなデジタル・トーテムが新たな都市空間を構築
スペイン屈指の観光名所、カナリア諸島のビーチにデザインされたデジタル・トーテムが、このたび世界的な建築アワード「Architizer A+プロダクトアワード2021」と、「Grand Prix du Design Awards 2021」の金賞を受賞した。デジタル・トーテムは、カナリア諸島の島々に設置され、島の情報を表示する装置として、観光客向けの地域情報や環境情報を提供する。サステナブルな開発の計画やデザインを手掛けるLPAスタジオのデザインにより、機能的でアーティスティックなトーテムが、街の一角に新たな空間を創り出している。
機能性とデザイン
トーテムのデザインは、島の先住民の陶芸品をモチーフに再現されている。この地に古来から続く工芸は、太陽神「Magheq」への崇拝を起源としており、幾何学模様をあしらった円形で表現されることが多い。
トーテムは、木製の輪を南北に面するように垂直に立て、表面には各地の伝統工芸を象徴する模様を刻み、カナリア諸島の多様な文化を表現している。北に面した側面は、1.2㎡のビデオスクリーンになっており、リアルタイムの環境データやツーリスト向けの観光情報を映し出している。南に面した側面には、太陽光発電システムを施し、トーテムの電力を賄っている。
トーテムは、上部に穴を開けることで、日時計としても機能している。年に一度の冬至には、穴を通った太陽光が地面の銅のモチーフを照らす仕掛けを施し、冬至を祝う伝統を継承している。
都市空間
カナリア諸島の島々に設置されたトーテムは、常に北側に日陰ができるように全て設計されている。円形の敷石の上に設置されたトーテムの周りには、それぞれカスタムメイドされた、電力チャージ機能が付いた椅子、プランター、照明、ゴミ箱などを配置し、人々が集いくつろげる新たな空間を創出している。
古代では農業のために太陽の至点を理解することが重要で、太陽は人々の生活において重要なものだった。現代では、ビーチに降り注いで環境産業を潤し、再生可能エネルギー社会への移行を牽引するシンボルでもある太陽。トーテムのデザインは、2,000年以上も昔に築き上げられた、カナリア諸島と太陽との関係性を尊重し、継承していく象徴的なデザインであると言える。
LPAスタジオについて
LPAスタジオは、亜熱帯や地中海エリアのサステナブルな開発にフォーカスするデザイン事務所。亜熱帯地域の経済、社会、環境の可能性を広げるべく、環境負荷を最小限に抑えたエコロジカル・デザインの信念に基づいて活動を展開している。