ISSADESIGNの設計デザインによるバラエティに富んだ空間

都市部のコンパクトな街並みにはまる住宅の図面は、概してバリエーションが少なく単調なものになりがちだ。ISSADESIGNは、複数の階にまたがる一戸建て住宅を実験的に設計。従来の間仕切りのあるフロアから脱却し、図面にバリエーションを増やすことに挑戦した。工夫のひとつとして、階をずらしたり、半階層にしたりすることで上下空間に変化をもたらした。その結果、各階の間に面白い関係性が生まれ、一体感の感じられるひと続きの大きな空間が作られたのである。

Photo credit: Philippe Bernard

コンセプトと戦略

モントリオール・ヴィレ地区の中心に位置する一軒家プロジェクト「セントジェラール」は、この地区の建築規範に則り、既存の正面ファサードを保存利用。街並みの美しさを損ねない工夫をしている。一方、後方のファサードは、半階建ての増築のために取り壊された。半階建てがもたらす立面は、空間の最大利用を可能にする。家族にとっては、レベル差のある図面を取り入れることは、部屋間の騒音の広がりを少なくし、利用者間のプライバシーを高めるという意味で、とても有効であった。

Photo credit: Philippe Bernard

空間の分布

各階の生活空間は、プライバシーの確保に配慮して配置されている。1階と2階は、共同の生活空間となっている。1階にはエントランス、オフィススペース、リビングルームがあり、2階にはキッチンとダイニングルームという、よりダイナミックな生活空間が広がっている。地下には2つのベッドルームと共有バスルームを設け、ティーンエイジャーのためのプライバシーを確保したフロアとなっている。上階は、3階に大きなベッドルームとバスルーム、ランドリールームを配置。4階には、静かにくつろげるマスタースイートがある。これらの階を繋げるのは、垂直に展開して家を中心で支える階段である。家のバックボーンとして機能し、空間に一体感をもたらすと同時に、住空間を分割する役割も担っている。

Cross section. Photo credit: Issadesign

Photo credit: Philippe Bernard

マテリアリティ

マテリアリティの面では、プロジェクト全体を通して、シンプルさと素材の統一感が追求されている。ISSADESIGNは、フロア間が視覚的に途切れることなく自然に繋がることを意識した。そのため、踊り場や階段にはガラスの手すりを採用し、視線と光が自由に行き交う、見通しがよく明るい空間を実現。素材はシンプルながらも、クラシックな白と黒を効果的に配置し、印象的なコントラストを表現している。さらに、木を使うことで落ち着きと温かみを空間全体にもたらしている。この二面性をよく表しているのが、一番上の踊り場に位置する主寝室である。ベッドルームに面した黒が基調のバスルームは、そのコントラストが際立ち、シェルターのような空間となっている。それと向かい合うように配置されたベッドルームは、木に包まれることで、より安らかな表情で自然との結びつきをもたらしている。また、大きな窓から望むケベック北部の風景が自然との繋がりをさらに強調している。

Photo credit: Philippe Bernard

サンジェラール邸は、垂直方向への空間展開が大きな課題であるコンテクストにおいて、タウンハウスという特殊な空間の性質を考慮しながらも、建築的な探究と冒険を恐れないことの重要性を教えてくれるプロジェクトとなった。

Photo credit: Philippe Bernard

ISSADESIGNについて

ISSADESIGNは、2011年設立のモントリオールを拠点にしたデザインオフィス。環境に配慮したオフィスや商業施設、住居の設計を行っており、手掛けたプロジェクトは428件に上る。クリエイティブコンサルティング、インテリアプランニング、インテリアデザイン、建築などの分野でその専門性を発揮している。サステナビリティの精神で顧客のニーズと要望に真摯に応え、地球に優しい社会の実現のために、地道な活動を続けている。プロジェクトの大小にかかわらず、シンプルで低予算の環境に優しいソリューションを提案することを心掛けている。ISSADESIGNのデザイナーは、チャレンジ精神旺盛で、クリエイティブなソリューションや革新的なテクノロジーを常に追い求めている。このとどまることのない好奇心が、クライアントの期待を上回る、ユニークで審美性に溢れ、それでいて機能的な空間を創出しているのである。