ランドスケープを包括する彫刻のようなアート建築「コモン・スカイ」

バッファローAKG美術館の建物のひとつであるSeymour H. Knox Buildingの中庭を包み込む、ガラスと鏡のキャノピー「Common Sky(コモン・スカイ)」がこのたび完成した。アーティスト オラファー・エリアソン(Olafur Eliasson)と建築家 セバスチャン・ベーマン(Sebastian Behmannga)率いるスタジオ・アザー・スペース(SOS)がデザインした本プロジェクトは、彫刻のようなアートワークであると同時に、周囲の景観と建物を繋ぐ建築フレームでもある。

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'Common Sky', 2019-2023, Studio Other Spaces – Olafur Eliasson and Sebastian Behmann. Photo credit: Studio Other Spaces

このプロジェクトは、建築事務所OMAの重松正平による新しいマスタープランの一環として2019年に始まった。美術館160年の歴史の中で最も重要な拡張・開発プロジェクトとなっている。

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'Common Sky', 2019-2023, Studio Other Spaces – Olafur Eliasson and Sebastian Behmann. Photo credit: Studio Other Spaces

Common Skyは、文字通り、「空の共有」がテーマとなっている。レンズのようなガラスの屋根を介して、人々は季節の変化、木漏れ日、流れる雲の形など、大気の儚い特性を感じながら、周囲の環境と繋がることができる。交互に配置された鏡と透明なガラスパネルは、空間に動きをもたらし、訪れた人々が作品の中にも存在する不思議な感覚を生む。断片化された内外の視点が共創されることで、建物の外と中の境界線が曖昧になる。鏡のさまざまな角度によって生じる複雑で万華鏡のような映り込みは、下の中庭を移動する人々の動きを切り取って枠に収め、予想外の景色を見せてくれる。

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'Common Sky', 2019-2023. Courtesy of the Buffalo AKG Art Museum, OMA, Cooper Robertson, and Studio Other Spaces. Photo credit: Marco Cappelletti

Common Skyは、幾何学的な表現と遊び心のある詩的なアプローチを組み合わせた、ダイナミックで造形的な声明です。

-オラファー・エリアソン、芸術家兼SOS共同創設者

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'Common Sky', 2019-2023, Studio Other Spaces – Olafur Eliasson and Sebastian Behmann. Photo credit: Studio Other Spaces

キャノピーの幾何学的な形状は、中庭を横切る軌道を形成している。屋根の端の三角形のパターンは、中央に向かうにつれて六角形のパターンになる。屋根の構造は2層になっており、交互に配置された鏡面で覆われている。太陽光はここで反射され、熱の上昇が最小限に抑えられる。環境に配慮した機能である。六角形と三角形の配置は、屋根の開閉をバランス良く調整する役割も果たしている。表面のほぼ半分が閉じられているにも関わらず、この空間は開放的で風通しの良い印象を与える。

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'Common Sky', 2019-2023, Studio Other Spaces – Olafur Eliasson and Sebastian Behmann. Photo credit: Studio Other Spaces

構造はカーブを描きながら、中心から外れた一点の支点で地面まで伸びており、空間にアシンメトリーな性格を持たせている。この円錐状の柱は、1960年代に植えられた一本のサンザシの木があった場所を示すもので、歴史を偲ばせるモニュメントとなっている。この柱があることで、屋根構造のために新たな支持システムを設ける必要がない。中空の木の幹のように、大きくうねりながら、雨、雪、葉、光など、外部の要素を引き込んでいる。

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'Common Sky', 2019-2023. Courtesy of the Buffalo AKG Art Museum, OMA, Cooper Robertson, and Studio Other Spaces. Photo credit: Marco Cappelletti

この構造は、バッファローAKGアートミュージアムを含む周囲の全ての要素、公園、そして隣接する建物を考慮したユニークなデザインを形成しています。

ーセバスチャン・ベーマン、建築家兼SOS共同創設者

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Olafur Eliasson and Sebastian Behmann. Photo credit: Studio Other Spaces

スタジオ・アザー・スペース(Studio Other Spaces)について

2014年にベルリンでアーティストのオラファー・エリアソンと建築家のセバスチャン・ベーマンによって設立されたStudio Other Spaces(SOS)は、公共空間のための実験的な建築プロジェクトやアートワークを通じて、建築と芸術を結びつけている。Studio Other Spacesの定義する包括的なアプローチは、彼らの共有の関心である空間の実験を経て到達したものである。プロジェクトのすべての段階で、全体的な視点からディテールの間を連続的に移動し、あらゆる側面からプロジェクトに取り組んでいる。特定の場所の雰囲気や触れることのできない特性を前面に押し出し、研究と実験を通じて素材性にアプローチし、物理的な動きを空間を形作る手段として強調している。