タイの建築デザインスタジオ「Sher Maker」が手掛けた焼杉の山小屋

タイ北部、チェンマイの中ほどにあるメーリムは、緑豊かな山岳地帯で、人気の観光スポットである。自然に囲まれたこの場所に、静かに過ごせる木造の山小屋が建築された。建築デザインを手掛けたデザインスタジオ「Sher Maker」は、青山デザインフォーラム(ADF)の提携団体であるタイ王立建築家協会(ASA)の会員であり、シンプルかつエコフレンドリーな建物やランドスケープを得意としている。adf-web-magazine-asa-sher-maker-wood-and-moutain-cabin-7

この山小屋の最大の特徴は「焼杉」を使用した外壁である。家具職人であるオーナーのアイデンティティを活かしたいという想いから、「木」を素材とすることにこだわり、再利用木材をチェンマイ各地から調達した。木材を焼くことで、かき集められた古い木材に新たな命が吹き込まれ、厳しい気候に耐えうる強さが備わるのだ。元来、輸入木材よりも高い耐候性を持つこの地の木材との相性も考慮している。「焼杉」は、杉材の表面を焼いて炭化させる、日本古来の伝統技法。表面に炭化層があることで、通常の杉材にはない耐久性が生まれ、腐敗や延焼を防ぐ効果がある。その自然の美しさと独特の風合いが国外でも注目を浴び、環境に優しい側面も相まって、近年世界的に人気が高まっている。adf-web-magazine-asa-sher-maker-wood-and-moutain-cabin-9

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1階には山々を見渡せる大きな窓のあるリビングルームと、その先に開けたテラス、そして浴室とパントリーを配置。寝室は2階となっている。プライバシーを守るため、テラスに面した一面以外の三面に窓は設けていない。構造は、タイ北部でよく見られる木造のシンプルなものにし、現地の職人が作業を行った。スタジオの作業場を利用して、模型作成を繰り返し、適する素材を選定したり、壁面の仕上がりを調整したりした。素材への理解を深めることで、その良さを活かした使い方や加工方法へと繋げることができている。木板一つ一つが異なる木目や風合いを見せることで、人の手で作られた温もりが感じられる優しい表情の外観となり、大自然に見事に溶け込んでいる。

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