コンセプトは住宅スケールの5つ星ブティックホテル
ダニエル・ジョセフ・シェニン設計事務所が、アメリカ・ネバダ州ラスベガスの郊外にある20,000sf(約1,858m2)の土地に建築とアートを融合させた映画のような隠れ家的な邸宅を完成させた。クライアントはある著名な夫婦で、彼らはそれまで居を構えていた南カリフォルニア沿岸部の家を引き払い、砂漠の南西部で開放的で絵のように美しい風景を求めていた。多忙な生活のなかで休日や季節の節目には一族全員が集まれるスペースを兼ね、孫を含めた大家族が快適に暮らせる隠れ家を希望していた。
景観の統合
最初に取り組んだ課題は、購入した土地の範囲内で最大限の効率を確保するための複合施設全体の空間計画だった。その結果、擁壁、柱、石造りの車道など、掘削された景観の要素がデザインに取り入れられ、住宅のテーマへと移行する構成となった。エントランスにはEV充電ステーションを備えたモーターポートへと続く長いドライブウェイ、エントランスの目印となるランタン、中庭へと続く装飾用のブロンズ製ドアが設置された。
眺めの良い部屋
エントリー・ポータルの上部には、「クラウン」と名付けられたガラスの箱があり、そこにはエンターテインメント・ラウンジ、ジム、スパが設けられた。窓からは東側に渓谷とラスベガス・ストリップ、西側に砂漠の景色が広がる。ボールコートとプールエリアを含むテラス状の屋外ダイニングとエンターテイメントスペースは、景観を楽しむための構造的でありながらカジュアルな環境を提供している。
時代を超えたコンセプト
シェナンは家の内部をH型にレイアウトし、Hの字型の片側に個人の隠れ家を、もう片側にゲストの宿泊施設を設け、それにより片側を環境的にシャットダウンするオプションも機能するように構成した。クライアントの希望によりハドソンリバー派の絵画コレクションを取り入れたデザインは、アート作品を額縁で囲むように、空間内の生活をフレーミングしている。「ニュアンスの発見」というコンセプトに導かれた空間構成は、クラシックとモダンを融合させた独特の美学を持ち、住みやすい環境を作り出している。
状況に応じた快適さ
家の中央の廊下は、集いのスペース、様々な部屋への入り口、外部とのつながりを特徴としている。家具はリゾート風のリッチなものからコンテンポラリーなデザインまで幅広くセレクトされており、折衷的で状況に応じたものが選ばれている。家が集いの場として機能することを望んだクライアントに応え、ダイニングルームのオーバーフローに対応する広々とした中央のギャラリーが設計され、60人以上のゲストが座れる大きな共同テーブルが設置された。また、すべての部屋が日をよく取り込めるよう工夫して設計された。
パーソナルスペースのスイート
各廊下の突き当たりにある前庭は、この家の5つのゲスト用ベッドルームのうち、2つのベッドルームへの入り口を示している。ゲスト用ベッドルームは、大理石のダブル洗面台、バスタブ一体型の広々としたガラス張りのシャワーなど、リゾートならではの工夫が施され、それぞれ庭のシーティングエリアにアクセスできるリゾートクオリティの部屋となっている。反対側にあるプライベート棟は自己完結型の隠れ家となるように設計された。書斎、プライマリースイート、独立したバスルームとクローゼットがあり、男性的なデザインと女性的なデザインを対照させ、スイートルームのラグジュアリーな雰囲気が完成している。
ダニエル・ジョセフ・シェニン設計事務所
2014年に設立。完全にコンセプト化された住宅環境の設計を専門とする建築とインテリアの統合スタジオである。彼らの哲学は、デザインは没入的であるべきであり、様々な感情を呼び起こすためにすべての感覚を活性化させるという考えに根ざしている。各プロジェクトにおいて、視覚的なステージを設定し、場所の感覚を作成するために使用されるストーリーアークとユニークな語彙を持つ経験を積み重ねている。