歴史的文脈に寄り添う医療教育のための建築
カナダ・ケベック州レヴィに位置する歴史的施設Hôtel-Dieu de Lévisに、ラヴァル大学(Université Laval)の医学プログラムのための新たな教育パビリオンが完成した。本プロジェクトを手がけたのは、カナダを拠点とするアンヌ・キャリエ・アルシテクト(Anne Carrier Architectes)。約90名の学生を受け入れるこの教育施設は、歴史的環境との調和を重視しながら、現代の医療教育に求められる実践的かつ協働的な学習環境を実現している。
設計はアンヌ・キャリエ・アルシテクトがCoarchitectureとコンソーシアムを組んで進め、修道会アウグスチノ会(Augustines)が築いてきた記憶の場と、Hôtel-Dieuの段階的な増改築の歴史を尊重しつつ、未来志向の学術環境としての機能性を融合させている点が特徴である。
建築的連続性を生み出す構成と動線
本パビリオンは同事務所が近年手がけたMaison DessercomやLévis CLSC–CHSLDと視覚的・空間的な連続性を持たせることで、敷地全体の統一感を保っている。また、3層にわたって架けられた全長13mのガラス張りブリッジは歴史的なアウグスチノ会パビリオンと新棟を接続すると同時に、南北に延びる屋外歩行者動線とも連動し、流動的な回遊性を生み出している。さらに敷地の地形に応答するボリューム構成により、周辺の屋外空間も再編され、19世紀に始まる医療・教育施設としての歴史が現代に引き継がれている。抑制された素材選択と現代的な表現を用いながらも、周囲の歴史的景観を圧倒することなく、確かな現代建築としての存在感を示している。
周囲の風景と結びつく学習環境
歴史地区Vieux-Lévisを望む立地を生かし、建物は周辺環境との強い関係性を築いている。Wolfe Streetに沿って整えられたファサードは、歴史的建築群との一体的な景観を形成し、わずかに角度を持たせた内側の立面が、象徴的なランドスケープへの眺望を切り取る。北西側には、セントローレンス川とケベック・シティを一望できる大開口が設けられ、風景そのものが日常体験の一部となる。一方で南東側ではアウグスチノ会の庭園に面した内向きの中庭が形成され、静かな思索や非公式な交流の場として機能している。
学びとウェルビーイングを支える内部空間
建物内部は、自然光に満ちた柔軟性と安全性を備えた空間構成とし、学生、医師、教員の偶発的な交流を促す。患者パートナークリニック、専門ラボ、アクティブ・ラーニングに対応した教育空間を備え、理論と実践が自然に交差する環境を構築している。建物の中心には、4層吹き抜けのアトリウムが設けられ、明快で開放的な社会的ハブとして機能する。この空間は、教育だけでなく、コミュニケーション、集中、そして心身の健やかさを支える建築的装置となっている。
地域社会への持続的な貢献
この教育パビリオンは、単なる大学施設にとどまらず、ショーディエール・アパラシュ地域における将来の医師の育成と定着を支える重要な基盤として構想された。人間中心で、光に満ち、地域に深く根ざした学習環境は、学生のアイデンティティとコミュニティへの帰属意識を育む。歴史、現代性、そして人間性を結びつける本プロジェクトは、レヴィにおける医療アクセスの向上と、地域文化の豊かさに寄与している。
Anne Carrier Architectes(アンヌ・キャリエ・アルシテクト)
30年以上にわたり、カナダ・ケベック州を中心に活動する建築設計事務所。感性、創造性、そして強いリーダーシップを融合させ、世代を超えて共鳴する建築を生み出し続けている。

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