ファイバーグラス強化プラスチックで生まれる色と光の構成美
トロントのオッシントン・ストリップ北部に位置するMISC. Coffeeは、建築設計事務所Studio for Architecture & Collaboration(StudioAC)によって設計された小規模カフェである。インフラや設備環境で使われる工業用素材・FRP(ファイバーグラス強化プラスチック)を主素材に用い、ミニマルな素材構成で視覚的に強いインパクトを持つ空間を実現している。さらに、空間の主役となるのは半透明のグリーンFRPパネルで、自然光を柔らかく拡散し、鮮やかな色と独特の質感をコンパクトな店内に取り入れている。
レイアウトは三角形のバーカウンターを中心に構成されており、スムーズな導線計画と視覚的効果の両立を図っている。エントランスからはこの幾何形状がFRPの存在感を際立たせ、訪れた人々に素材の質感と空間構成を印象づける。頭上には同形状のキャノピーが設置され、露出されたUnistrutチャンネル(建設用グリッドシステム)から吊り下げられている。このグリッド構造はFRPのパターンと共鳴し、透明性・繰り返し・構造美を重ねるような視覚的効果を生み出している。また、ステンレス製のカウンターや棚も、こうした工業的素材構成を支える重要な要素となり、反射性の高いこれらの面は光を増幅し、時間帯によってFRPのグリーンが異なるトーンに変化することで、空間に動的な表情をもたらしている。こうした素材選定は耐久性と明快さを兼ね備え、機能性とユニークさを両立させる設計意図とも調和している。
- Photo credit: Scott Walsh
- Photo credit: Scott Walsh
- Photo credit: Scott Walsh
- Photo credit: Scott Walsh
- Photo credit: Scott Walsh
- Photo credit: Scott Walsh
- Photo credit: Scott Walsh
- Photo credit: Scott Walsh
設計の基本方針はシンプルで、「既製の工業素材を文脈からずらして使う」「幾何構成で機能とデザインの両立を図る」「仕上げや装飾に頼らず、素材と光、レイアウトに空間性を委ねる」ー そうした姿勢が、最小限の介入で最大限の個性を生む空間につながっている。デザインや建築に敏感な地域であるトロントのこの一角において、MISC. Coffeeは、工業素材を大胆に再解釈した内装デザインによって、シンプルでありながらも強い存在感を放つ空間として注目を集めている。
- Photo credit: Scott Walsh
- Photo credit: Scott Walsh
- Photo credit: Scott Walsh
- Photo credit: Scott Walsh
- Photo credit: Scott Walsh
- Photo credit: Scott Walsh
- Photo credit: Scott Walsh
- Photo credit: Scott Walsh
Studio for Architecture & Collaboration(StudioAC)
StudioAC(Studio for Architecture & Collaboration)は、2015年に設立されたカナダ・トロントを拠点とする建築設計事務所。設立以来、カナダ国内外で多数のアワードを受賞し、Azure Magazineの「注目すべきカナダの建築事務所30選」にも選出された。2019年にはDesign Exchangeより「カナダ最優秀新進デザイナーアワード」を受賞。2021年にはCanadian Architectおよび20+Changeによって国内有数の設計事務所のひとつに選ばれ、2023年にはDesignlines Magazineより「Designer of the Year」に選出された。StudioACは、プロジェクトごとにイデオロギー的な核を見出し、設計プロセスを通して一貫性をもたせるアプローチを大切にしている。「明快さ」「可読性」「個性」の三要素を軸に、スケールの異なる様々な文脈に応答する建築を追求しており、良質な建築やデザイン、アートが都市に新しい対話と価値をもたらすと信じている。

日本語
English

















