両国の文化的な類似点をテーマに掲げ、「音楽」を「文化をつなぐ普遍的な言語」として前面に打ち出す
2025年大阪・関西万博ハンガリー・パビリオンが建築・創造・芸術コンセプトを発表した。本万博のテーマ「いのち輝く未来社会のデザイン」に加え、ハンガリー・パビリオンは日本文化とハンガリー文化の共通点を前面に押し出したコンセプトを展開。パビリオンでは共通の価値観とルーツを探求することを目指し、その中でも特に注目したのは両国の民族音楽に見られる「五音音階」を基調とした特殊な響きを持つ旋律で、普遍的な言語である音楽を通じ訪問者に没入感のある体験を提供する。
建築コンセプトを手がけたのは、コシュート賞およびイプル賞受賞の建築家、ゾボキ・ガーボル。パビリオンは建築美と精神性の両方で訪問者の関心を引きつけることを目指しており、エントランスをくぐるとハンガリーの草原を思わせる緑豊かな空間が広がり、そこには日本とハンガリーの文化的共通点が反映されている。パビリオンの中心的存在として、干し草の山のような形をした「ドーム」があり、内部はシアタースペースとして機能、ハンガリー民謡を使ったライブパフォーマンスも行われる。
日本とハンガリーの伝統建築には、共通する町並みや建築様式があり、また自然素材を活かした建築文化も共通点の一つです。民族音楽や民族舞踊こそがハンガリーの精神の鏡であるため、パビリオンの設計では風景と伝統的な農村文化の調和を表現しました。訪問者は、カルパチア盆地の穏やかな草原の植物相が再現された空間を通り抜けて建物の中へと進みます。静寂と安らぎの空間である展示エリアでは、民謡の世界を想起させる自然の風景と音が広がります。パビリオンの中心である「響きのドーム」では、五音音階を用いたハンガリーの代表的な民謡を学ぶことができます。
建築家、ゾボキ・ガーボル
パビリオンのレストラン「ミシュカ キッチン&バー」ではハンガリーの田園文化や農村の伝統、食文化を基盤とした豊かな風土、カルパチア盆地の恵み、そして先人たちが世代を超えて受け継いできたレシピを活かしたメニューが提供される。
パビリオンのビジュアルアイデンティティを構成する重要な要素の一つに、スタッフのユニフォームが挙げられる。デザインを決定するためのコンペティションが開催され、「エリシアン(Elysian)」ブランドの著名デザイナー、ボーディシュ・ボグラールカの作品が採用された。機能性と美しさのバランスを重視し、持続可能性に配慮しながら現地の気候特性も考慮、ハンガリーの民俗文化の造形美と、控えめながらも洗練された日本のデザイン要素が融合したものに仕上がっている。