霧と光のインスタレーションが、Arc ZEROを再解釈し、ソウル屈指の成長地区に浮かぶ瞑想的なランドマークとして立ち現れる
オーストラリア人アーティスト、ジェームズ・タプスコットによる霧と光のインスタレーションがArc ZEROを再解釈し、ソウル屈指の成長地区に浮かぶ瞑想的なランドマークとして立ち現れる。淡く幻想的な光のリングが、いまソウルのルーフトップに浮かび上がっている。タプスコットは今年初め、自身の代表作を進化させた《Arc ZERO: Eclipse》を発表し、世界的に権威ある照明デザインの賞「LITライティング・デザイン・アワード」において、デザイン・オブ・ザ・イヤーを受賞した。
本作が設置されたのは、ソウル南東部で急速に発展を続ける高徳(コドク)地区の新たな複合開発施設の屋上。屋上庭園という日常的な空間を、静かなスペクタクルの場へと変貌させる《Eclipse》は、霧、光、水という最小限の要素のみを用いながら、現実と非現実の境界を曖昧にする没入体験を生み出している。その根底にあるのは、人間と自然との関係性を問い直し、テクノロジーによる錯覚ではなく、共存のひとときを提示しようとするタプスコットの一貫した姿勢である。

Arc ZERO is part of a concisely curated collection of works in the new development.
Photo credit: Studio JT
多くの現代的な光の作品がデジタル技術に依存するなかで、タプスコットは自然の要素を直接用いる手法を選ぶ。その結果、見た目にはきわめてシンプルでありながら、視覚や感覚に深く訴えかける複層的な体験が立ち上がる。《Eclipse》では、半円状の構造体が特注のインフィニティ・リフレクティング・プールに設置され、水面に映る反射によって完全な円環が完成する。夜になると、そのリングは重力や地平線から解き放たれたかのように宙に浮かび、あらゆる方向へ幽玄な霧の光を放つ。
本作は、2017年に日本で《Nimbus》として初めて設置された《Arc ZERO》の進化形でもある。橋を取り囲むような建築的スケールと高い没入性を特徴としていた初期作品に対し、《Eclipse》では、空間、光、反射の視覚的な関係性がより開放的に探求されている。かつてはほとんど実体を持つ闇として感じられたリング中央の空白は、今回、遠景に架かる橋を切り取るフレームとして機能し、都市の風景そのものを作品に取り込んでいる。
注目すべき点のひとつが、リングに採用された特注のダイヤモンド断面構造だ。製作は非常に高度な技術を要するが、鑑賞者の姿が表面に映り込みにくく、視覚的な没入感を損なわない効果を生んでいる。鑑賞者は自分自身の像に引き戻されることなく、純粋に作品の体験に身を委ねることができる。
ルーフトップガーデンの角地に配置された《Eclipse》は、訪れる人や居住者だけでなく、遠方からもその存在を主張する。近くの高速道路を走る車の窓から眺めても、照明に照らされた霧の動きと質感は、映画的ともいえる強い印象を残す。
《Arc ZERO》のシリーズはこれまで世界各地に設置されてきた。台湾・高雄にある恒久設置作品は、ランドスケープアート部門で2023年のCODAアワードを受賞しており、《Eclipse》の成功は、抑制と驚異のバランスを追求してきたタプスコットの実践が国際的に評価され続けていることを示している。光と空間を共有するひとときを、静かに人々に促す作品である。
Studio JT
オーストラリア人アーティストのジェームズ・タプスコットが2017年に設立したスタジオ。タプスコットは過去20年以上にわたり、自然現象と光を融合させ、ひとに馴染みのある風景や要素を新たな体験として立ち上げる学際的な実践を発展させている。
彼の作品はアジア、オーストラリア、ヨーロッパ、アメリカ各地で発表・設置され、観る者に深い印象を与えるとともに、数々の賞を受賞している。現在は、オーストラリア、中国、アメリカにおける恒久的なインスタレーションに取り組むほか、世界各地で予定されている複数の期間限定作品や展覧会の準備を進めている。

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