デジタルな存在感から物理的な共感へ
LAAB アーキテクチャーがカナダ・モントリオールにあるファニチャーを扱うデジタル・ネイティブの新興企業・Cozeyの店舗を完成させた。パンデミックのさなかである2020年に誕生したCozeyはコロナも収束した2023年、自分たちの理念を忠実に表し「独自の売り」を体現でき、かつ従来の競合他社と強く差別化され、顧客が直接商品に触れることができる初の実店舗を作りたいと考え、トロントのクイーン・ウェスト・ヴィレッジにある街角の空きスペースを確保した。
ブランドをつくる
CozeyはLAABアーキテクチャーにフラッグシップのプロトタイプを依頼し、最適なユーザー・エクスペリエンス・ジャーニーを定義することから始めた。LAABの戦略的なブランドスケープ・プロセスを活用して、店舗の物語を洗練させ、デザインの基本を修正した。アディダス、シルク・ドゥ・ソレイユ、ユービーアイソフトといった一流ブランドのデザインで受賞歴のあるLAABは、ブランド・アイデンティティを構築し、デジタルと物理的な領域のグラフィック・デザイン・コンポーネントを開発した広告代理店Cossetteの意見を取り入れながら、戦略的なデザイン・フローを指揮した。
LAABのクリエイティブ・チームは、インテリア建築だけでなく、陳列台から棚、デザインセンターの資料用キュービクルまで、スペースに統合された家具や、家具コレクションのビジュアル・マーチャンダイジング戦略も考案した。
製品に囲まれ「居心地よい(Cozey)」店舗
その結果、デジタルチャネルとフィジカルチャネルを完全に融合させた次世代型店舗が誕生した。オンラインのみで購買が行われるため、店舗内の倉庫やレジはなく、店内のディスプレイ商品が物理的なアバターとして機能する。デザイン・アプローチはUXと商品の両方に重点を置いており、巨大な織物を連想させる見事なウィンドウ・ショーケースが歩行者をスペース内に引き込む。
写真スタジオのサイクロラマに着想を得た「リング」に着想を得た細長いスペースを次々と通過させながら、顧客をその先にあるデザインセンターへと導く。各リングにある目玉製品を引き立てるだけでなく、曲線とエッジライトの背景が床から天井までシームレスに流れ、他の大手家具販売店のように人工的なセットピースに頼ることなく、一般的な家の部屋の寸法とプロポーションをサブリミナル的に呼び起こす没入感のある形を作り出している。
こうしてデジタルとフィジカルにまたがるような、シンプルでありながらも物議をかもすような店舗ができあがった。Cozeyの信条であるブランドよりも商品の優先順位を確保しながら、従来の小売のパラダイムを巧みに覆している。
革新性とシンプルさというスタートアップ企業の価値観に基づき、街角の店舗、ブランド体験スペース、デザインセンターを掛け合わせ完全に統合されたブランドと製品をフィジカルに体験できるスペースは、冒頭に掲げた「コージー(Cozy、心地よさ)とは何か」という課題に応えるものとなった。
LAABアーキテクチャー
クリエイティブ・リーダーであるミシェル・ローゾンによって2020年に設立された建築事務所。多数の受賞歴がある。都市およびインテリア建築サービスの再考を提唱し、独創的でインパクトのある不動産ソリューションを提供。革新的なストラテジック・デザイン・ツールキットは、建築環境に適用される戦略的コンサルティング、建築デザイン、創造的思考を組み合わせたものである。このユニークな戦略的サービスにより俊敏な問題解決設計プロセスを活用し、最も困難な不動産課題を克服し、あらゆるプロジェクトの潜在能力を引き出している。