シカゴの建築デザイン事務所JGMAによる、地域の医療を支える施設「フンボルト・パーク・ヘルス」のインテリアリノベーション

シカゴ北西部のプエルトリコ人が多く住む地域の中心にある、「フンボルト・パーク・ヘルス(旧ノルウェー・アメリカン・ホスピタル)」は、住民に寄り添い、高品質の医療を良心的な価格で提供する医療施設。患者やその家族、従業員、医師が直接連携をとることで、地域に密着した医療サービスを提供している。この地域のシステム再構築プロジェクト「ウェルネス・ディストリクト・マスタープラン」は新たな都市デザインを提案する6つのフェーズを10から15年の歳月をかけて段階的に遂行する大規模なプロジェクト。機能的で安全かつサステナブルな環境の構築を目指す本プロジェクトの一環として、築100年の当施設はリノベーションを行うこととなり、シカゴの建築デザイン事務所JGMAがインテリアデザインを担当した。再構築プロジェクトの第一歩となった本リノベーションは、地域住民の医療、さらにはウェルビーイングの再考に繋がるものとなった。

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Photo credit: Maria Monteagudo, JGMA

JGMAがデザイン設計した1階エリアは、患者のケアや訪問者の動線、そしてウェイファインディング(目的地案内)に関連した機能を持っている。プロジェクト面積およそ2300㎡広さに、22の個別セクションが作られ、それぞれにまとまったウェイファインディングシステムが設計された。また、ここで得られる高品質の医療サービスを映し出す、温かでウェルカミングな空気感を演出するデザインを心掛けた。

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Photo credit: Maria Monteagudo, JGMA

インテリアのリフォームは、色彩の強調によって、空間に活気と明るさをもたらした。床と壁を貼り替え、天井は新たに仕上げた。強い色彩の導入は、院内のウェイファインディングの要素となる、目的地の探しやすさの向上にも繋がる。隣接関係の再構築と、全ての人にとってウェルネスとプライバシーが確保される院内環境を目指し、パーテーションの新設や、救急科をはじめとした様々な医療エリアの壁の取り壊しが行われた。

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Photo credit: Maria Monteagudo, JGMA

半透過・半透明の素材を活用することで、開放感溢れる空間でプライバシーも同時に守られる。また、この空間を提供することで、病院を取り囲むアートやランドマークなどの文化と地域を繋げる役割も果たしている。ダイナミックな天井のデザインは、分かりやすいサイネージであり、ひいてはウェイファインディングシステムの向上に繋がり、施設を訪れた人々に余計なストレスを与えない。

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Photo credit: Maria Monteagudo, JGMA

当院は、地域医療のセーフティーネット施設であるため、日々の医療サービスを続行したまま、リフォームを進める必要があった。そのため、プロジェクトは細分化して行われた。医療が優先されるため、プロジェクト進行中は、人が行き交う廊下、クリニック、待合室などの空間が分断されることもあったが、進捗に合わせて都度エンドユーザーのニーズに合わせて変更された。

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Photo credit: F.H. Paschen

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Photo credit: F.H. Paschen

JGMAについて

JGMAは、代表のジュリアン・ガブリエル・モレノにより2010年に設立された建築デザイン事務所。地域活動に積極的に関わり、人々の生活を豊かにする心のこもったダイナミックな空間づくりを行っている。質の高いデザインは、市民生活に良い影響を与え、コミュニティの活性化に繋がると信じている。地域の顔となる公共施設の建設が直面する問題に立ち向かいながら、シカゴの様々なコミュニティにおけるプロジェクトに貢献してきた。社会から取り残され、質の高い建築物に恵まれない地域でのプロジェクトにも積極的に取り組んでいる。すべてのデザインシナリオは、それぞれのストーリーを持っており、その地域に合ったアプローチであつらえる必要がある、という信条のもと、日々利用する人々の個性や価値観を具現化した施設や空間を作っている。人々の生活を向上させる、革新的で適切かつユニークなソリューションを追求すべく、アイデアの検証や更なる研究への日々の努力を怠らない。