ギリシャ地中海料理のシグネチャーブランド

カナダの建築事務所アトリエ・カールが、2012年から2019年にかけて建設されたニューヨークの大規模不動産開発・ハドソンヤードの複合商業施設の5階と6階に位置するレストラン「ミロス・ハドソンヤード」の精巧なデザインを発表した。

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Photo credit: Felix Michaud

ニューヨーク、ラスベガス、マイアミ、モントリオール、ロンドン、アテネに店舗を構えるエスティアトリオ・ミロスは、今や北米におけるギリシャ地中海料理の重要なブランドとして知られている。最近では、ニューヨークのハドソンヤード開発地区に新たな店舗がオープンした。

アトリエ・カールとレストラン経営者の長年のコラボレーションから生まれたデザイン・アプローチは、「繰り返される商業的」なモデルを、新店舗の位置する場所へ敏感に適応させ、その場所の特徴がデザインの姿勢へとつながるものであった。

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Photo credit: Felix Michaud

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Photo credit: Felix Michaud

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Photo credit: Felix Michaud

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Photo credit: Felix Michaud

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Photo credit: Felix Michaud

このレストランの内部には、意図的な計画コンセプトというよりもむしろ技術設計上にカーブや角度のついた壁の部分と非常に不均等な外周がある。にもかかわらず、残りの空間からはマンハッタンのウエストサイドとハドソン川の素晴らしい眺めを楽しむことができる。

概要

レストランの5階部分には、新しいワインバー、鮮魚バー、ヨーグルトバーがあり、6階のメインダイニングルームへもアクセスができる。この2つの階は、円筒形のエレベーター・スペースを囲む印象的な階段で結ばれている。

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Photo credit: Felix Michaud

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Photo credit: Felix Michaud

メインフロアの構成は、5階からのエレベータータワーの連続からなる強い円形の要素が特徴的である。フロアは3層のテラスで構成され、曲面ガラスのファサードによりオープンスペースを異なるゾーンに区切っている。この3つのゾーンの中で最も高い位置にあるのが階段の踊り場で、これにより、ギリシャの島々にある村の傾斜した景観のように、ゲストが一歩足を踏み入れるとすぐに空間全体が見渡せる仕掛けとなっている。天井には空間の中心に大きな円形の開口部を設け、既存のスラブの最大高さに維持し、この大空間におけるもうひとつの基準点として機能している。厨房の各機能はダイニングから見えるように、空間の外周にL字型に配置されている。

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Photo credit: Felix Michaud

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Photo credit: Felix Michaud

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Photo credit: Felix Michaud

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Photo credit: Felix Michaud

伝統へのリスペクト

ギリシャ建築は象徴的な景観の美しさを追求し、風景に馴染んだシンプルな幾何学模様が有機的な構成を生み出す。伝統的でありながら、それを景観に押し付けるのではなく、むしろ景観の一部として溶け込んでいる。アトリエ・カールもこれらの原則にのっとり、シンプルでありながら有機的な構成を提案し、もともとあった空間の質をより高いものに昇華させた。

ギリシャのキクラデス諸島でも見られるように、このシンプルさには素材の選択が大きく関係している。石、コンクリート、漆喰を多様することで、島々の建築を力強く、かつてないほど時代を超越したものにしている。つまり、このプロジェクトの建築構成の主な要素をこの「古典辞書 」に基づいて構成し、偽りの様式で再現することではなく、現代的かつ永続的な解釈を提供しているとも言える。そうすることで、レストランを訪れた誰もがギリシャのシンプルな体験の力を思い出すことだろう。

アトリエ・カール

アラン・カールは25年以上にわたり、モントリオール大学建築学部の修士課程で教師として、また研究者として培った教育学的アプローチに依拠。2023年、カールは過去数十年の成果を継続・強化する観点から、5人の主要な協力者と力を合わせ、アトリエ・カールを設立した。チームは独創的で大胆な頭脳によって形成され、その土地の特殊性、素材の精密な加工、多様な建築技術が創造的なプロセスをもってサービスを提供している。