中国のテクノロジー分野で成功を収めた起業家が深圳の文化基盤と都市空間を再編する民間主導の美術館

オーレ・シェーレン設計事務所が、深圳市南山区で開発が進む新たな文化施設「Róng美術館」の設計を発表した。本プロジェクトは、テンセント創業者の個人事業であるTenova Futureによって委託されたものであり、中国の主要テクノロジー企業関係者が公共文化インフラへの投資を進める新たな動向を示している。20世紀および21世紀の視覚文化を対象とする同館は、美術、デザイン、建築、映画を横断する領域を扱い、フィジカルとデジタルの双方にまたがる文化発信拠点として位置づけられる。

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Ole Scheeren © Buro-OS

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Ole Scheeren © Buro-OS

この美術館は、オーレ・シェーレンが設計した複合開発「Houhai Hybrid Campus」の中核を成す施設でもある。同開発は、住宅、オフィス、商業、宿泊といった機能を統合し、昼夜を問わず稼働する都市環境を形成するものであり、美術館はその中で孤立した施設ではなく、日常生活に組み込まれた公共的な結節点として機能する。

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Ole Scheeren © Buro-OS

Róng美術館の誕生は、深圳の急速な経済成長とグローバルなテクノロジー拠点としての地位と密接に関係している。南山区単体でも小規模国家に匹敵する経済規模を持ち、深圳全体では中規模国家レベルのGDPを生み出している。このような背景のもと、本施設はテクノロジーによって生まれた経済的成功を文化的価値へと転換し、都市の文化的アイデンティティ形成に寄与する試みといえる。

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Ole Scheeren © Buro-OS

建築的には、開放性と公共性を重視した設計が特徴である。主要な展示空間は地上から持ち上げられ、その下部には日射や雨を避けつつ自然換気が可能な公共広場が広がる。この空間は常時アクセス可能な「アートフォーラム」として構想され、来訪者や市民の交流、インスタレーションやイベントの場として機能し、日常的な動線の中に文化的体験を取り込む。

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Ole Scheeren © Buro-OS_Photo by Zhu yumeng

建物は上方に向かって広がる円錐状のボリューム群によって構成され、深圳の高層都市景観の中で際立つ存在となる。内部には柔軟性の高い展示空間が配置され、大規模インスタレーションにも対応可能な空間構成が採用されている。また、外周に沿って設けられた動線は屋上庭園へとつながり、ウォーターフロントを望む屋外イベントスペースとしても活用される。

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Ole Scheeren © Buro-OS

外装は、積層する水平形状とガラスチューブによる半透明の外皮によって特徴づけられる。このガラスチューブは光を透過させるだけでなく拡散させる役割を担い、中国における伝統的なガラスの用法を参照しつつ、現代的なパラメトリック設計によって再解釈されている。その結果、時間帯によって表情を変える建築となり、都市の中で象徴的な存在感を放つ。

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Ole Scheeren © Buro-OS

環境性能も設計に統合されている。ガラスチューブは日射遮蔽や自然採光、通風を促し、エネルギー効率の向上に寄与する。また、屋根形状によって雨水を集めて再利用する仕組みが導入され、深圳が推進する「スポンジシティ」戦略とも連動している。これにより、本建築は単なる視覚的ランドマークにとどまらず、環境的システムとしても機能する。

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Ole Scheeren © Buro-OS_Photo by Zhu yumeng

夜間には外装の照明演出が可能であり、建物全体が動的な光の表現をまとい、都市の中で文化的な象徴としての役割を強める。

さらに、本施設は周辺都市との接続性にも配慮されている。高架歩行者デッキや公共交通機関との直結により、キャンパス内外の移動が円滑に行えるよう計画されている。

民間によって運営される文化施設として、Róng美術館は企業や起業家による資源を公共文化へと還元する新たなモデルを提示している。経済発展と文化投資を結びつけることで、都市のアイデンティティ形成や社会的関係性の深化に寄与するプロジェクトといえる。

現在建設中の同美術館は、2027年の開館を予定しており、展示施設としてだけでなく、都市と文化の関係を再定義する触媒としての役割が期待されている。

オーレ・シェーレン設計事務所

オーレ・シェーレン設計事務所は、建築、都市デザイン、インテリアデザイン、リサーチを横断的に手がける国際的な建築設計事務所である。香港、北京、ロンドン、ベルリンに拠点を構え、世界各地で先駆的な建築プロジェクトおよび都市開発を設計・実現している。

同事務所の建築は数多くの賞を受賞しており、2025年には「Tencent Helix」と「The Axiom」でCTBUHアワード・オブ・エクセレンスを受賞、2023年には「Fifteen Fifteen by Ole Scheeren」が同賞を受賞している。また、2023年にはシンガポールの「インターレース」でCTBUH 10年賞、2021年には同じくシンガポールの「DUO」でCTBUHアーバン・ハビタット賞、さらに2015年には「インターレース」でワールド・ビルディング・オブ・ザ・イヤー、2013年には北京のCCTV本部ビルでCTBUH最優秀高層建築賞(世界部門)を受賞している。