MIID REKAアワード2024のADF賞受賞作品

マレーシアのインテリアデザイン業界の代表団体であるマレーシア・インテリアデザイナー協会(MIID)が「MIID REKA Awards 2024」の受賞者を発表しました。青山デザインフォーラム(ADF)は、2018年からコーポレートパートナーとして本アワードをサポートしています。今年ADF Awardを受賞したのは、クアラルンプールのデザインホテル「Else Kuala Lumpur」で、歴史的な建物を活用しつつ、現代的なデザインで再生したプロジェクトが高く評価されました。

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View of Else Kuala Lumpur, showing the original building and the extended 2 floors above

「Else Kuala Lumpur」は1931年に建築されたアールデコ様式の建物「Lee Rubber Building」を改修し、49室を備えたデザインホテルとして生まれ変わりました。このホテルはクアラルンプールの歴史地区であるチャイナタウンに位置し、喧騒から離れた静かな空間を提供する都市型リトリートとして設計されています。建物には複数のボイド(空間)が設けられ、自然光を取り入れながら通気性を高める工夫がされています。また、新たに増築された3層の部分は元の建物の上部に「浮かぶ」形で設計され、モダンな要素と歴史的な建築との調和が図られています。

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Cross-section showing the relationship between the existing building, the new voids and the extension above it

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First Floor Layout Plan

 

デザイン

このプロジェクトのデザインテーマは「二面性」。過去と現在、公共とプライベート、光と闇といった対照的な要素を融合させ、訪れる人々に静けさと再生の感覚を提供します。チャイナタウンの賑わいから一歩足を踏み入れると、 そこには静けさと安らぎに満ちた空間が広がり、ゲストが自分だけの特別な体験を築き上げられるようなデザインとなっています。 また、 内部空間では、吹き抜けを設けることで自然光を取り入れ、廊下や共有スペースを明るく開放的な雰囲気に保ち、縦横に視線が交錯する構造によって建物全体に動きと視覚的な興味をもたらしています。

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Ground Floor Entrance Foyer

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Ground Floor Lounge

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First Floor Reception room

特徴

  • 自然光と通気性:廊下は自然通風を活用し、新設部分の陰を利用した天井ファンが涼しさを保つ。
  • 芸術性と職人技:内装には、ペナンの職人による100年以上前のマーバウ材や、サラワク州の先住民族が手織りしたベッドヘッドなど、伝統的な素材が使用されている。
  • 家具とアクセント:客室や共有スペースには、オマール・カーンのデザインによるラグや、アンティークの木製柱などが配置され、空間全体に温かみを与えている。
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First Floor Sunken Living Room

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1st to 3rd Floor circulation areas with the voids

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Fourth Floor Pool level, from guests' changing room area

プロジェクト

「Else Kuala Lumpur」は歴史的建築の価値を尊重しながら、現代的なホスピタリティの新たな基準を示しました。喧騒の中に静けさを見出す場所として、訪れる人々に特別な体験を提供しています。歴史的なアールデコ建築の保存とモダンなリノベーションの融合は、クアラルンプールの新しいランドマークとして設計されています。

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Part of the Sixth Floor Corner Suite

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One iteration of the standard (Mantra) rooms within the original building

Ar.IDr ADELA NATHALIE NURAINI ASKANDAR

「Else Kuala Lumpur」のデザインを手がけたインテリアデザイナーの Ar.IDr ADELA NATHALIE NURAINI ASKANDAR は、建築とインテリアの両方で豊富な経験を持つデザイナーで歴史的な建物の再生や現代的なデザインとの融合を得意としています。今回のプロジェクトでは、1931年建築のアールデコ様式の「Lee Rubber Building」を、地域の歴史を尊重しつつ、現代のホスピタリティ要件に応えるデザインホテルに変貌させました。彼女のアプローチは「過去と現在」や「公共とプライベート」といった二面性を探求しながら、空間全体に静けさと調和をもたらすことを目指しました。