多層的な表現によって記憶とその痕跡という身体性を現前させる

松村咲希による個展「Trace - 地に触れる」が麻布台ヒルズ内「Gallery & Restaurant 舞台裏」で2025年6月4日(水)から6月29日(日)まで開催される。京都を拠点に活動、近年では台湾やフィリピンなど海外のアートフェアでも目ざましい活躍を見せる松村の、新作を含むラインナップが展示される。

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松村の作品に共通する特徴は、その大胆な画面構成にある。作品の表面に注目すると、流れていくような流線形の白線と粗い画素数のデジタル画像のようなドット、凸凹とした質感の絵の具の盛り上がりなどが、幾重にも重ね合わされていることが分かる。疾走感のある白線は、松村が生まれ育った山村におけるスキーの体験、雪山を駆けるシュプールを彷彿とさせ、一方、引き伸ばされたデジタル画像のような描写は、惑星の衛星写真を極端に拡大したもの。人間が肉眼で捉えることのできない遠い場所のイメージと故郷の記憶に根差したイメージが同一の平面に重ね合わされた松村の作品を通じて、鑑賞者は多元的な時間と距離の重なり合いに対峙することになる。

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松村咲希 過去作品

松村咲希

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京都を拠点に活動する画家。スプレーワークやシルクスクリーン、厚塗りなどを駆使して、ダイナミックな作品を制作する。厚塗りと陰影のつけられた凹凸は、地表のように表され、色や形が錯綜する層に、スキーの経験から滑走する線が重なり融合した作品は、見る者を独自の想像世界の景色へと誘う。

1993年長野県野沢温泉村生まれ。2015年京都造形芸術大学美術工芸学科油画コース卒業、卒業制作展奨励賞受賞。2017年同大学院修士課程修了。同年アートアワード東京丸の内選出。「UNKNOWN ASIA 2019」ではスポンサーDPH賞と審査員Benny au賞を受賞。作品はユニバーサルミュージックジャパン、三菱地所、DMG森精機などに収蔵。主な個展に2018年「SEEING THINGS」(DMOARTS)、2023年「絵肌にシュプール」(GALLERY SCENA. by SHUKADO)ほか。国内外のグループ展やアートフェアに多数参加し、2024年には「Osaka Art&Design 2024 HANKYU ART FAIR」の阪急うめだ本店でのウィンドウ制作でインスタレーションに挑戦。活動の幅を広げ続けている。

松村咲希個展「Trace - 地に触れる」開催概要

会期2025年6月4日(水) 〜6月29日(日)
時間11:00~20:00 ※月曜定休
会場Gallery & Restaurant 舞台裏
URLhttps://tinyurl.com/2wj8ky3k