主要展覧会、参考文献等のレファレンス情報を搭載し、日本のアーティスト情報を国内外に発信
国立アートリサーチセンター(NCAR)は美術振興のナショナルセンターとして、日本のアートに関するリサーチの振興に資するため、「日本アーティスト事典(Dictionary of Artists in Japan)」(DAJ)を2024年3月6日に正式版として公開した。DAJはNCARの情報資源グループが日本のアートに関する国際的リサーチ拠点の形成を目指し、日本のアーティストを調査する際に役立つオンライン総合事典を公開しようと準備を進めてきた。全国美術館収蔵品サーチ「SHŪZŌ」の一部であった「作家情報」サイトを土台に、事典としての機能強化を図り2023年9月のベータ版を経て、正式版の公開を開始する。
DAJのおもな収録対象は日本の文化芸術の発展に寄与したアーティストで、収録範囲は明治元(1868)年以降に活動したアーティストから1995年以前生まれのアーティスト(グループの場合は中心人物の生年)としている。各アーティストについては氏名(別名含む)、生没年、生没地、典拠情報等の基本情報を収録。本公開での収録件数はベータ版公開時から約1,700件増加の約4,200件で、今後も引き続き追加・更新をしていく予定。
さらに、4,200件を超えるアーティストのなかから、1.重文指定作品があること、2.国立美術館で個展が開催されていること、3.国立美術館コレクションの主要作品であること、などを基準に約80名を選出し、外部執筆陣の協力を得ながら作家解説を加え、リサーチを深めることに資するよう当該アーティストに関する主要展覧会・主要所蔵先・書誌(参考文献)等のレファレンス情報の充実に取り組んでいる。情報は一部を除いて日英2か国語で利用可能で、来年度以降は国内外での話題性や動向に配慮しながら年間約20件程度のアーティストについて付加情報の追加を着実に進めていく。
DAJ本公開の背景
国際的に通用する日本のアートに関する本格的なレファレンスツールは、これまで十分には作成されていなかった。日本の人名事典は人物に関する日本語の解説文が主体で参考文献や主要展覧会などのレファレンス情報が十分には備わっておらず、調査を進める手がかりとしては不十分な状況だった。海外では1970~1980年代の事典が今なお使用され、現代のデジタル化社会に適したレファレンス情報を備え、かつ日英で記述された本格的な人名事典のオンライン公開が課題となっていた。NCARは日英二か国語を備えた日本のアーティストに特化した総合事典の構築を目指し、海外で定評のある人名事典をモデルに試行錯誤を重ねてきた。
「DAJ」製作担当・NCAR情報資源グループ
全国の美術館収蔵品に関する情報集約と発信、国際的リサーチセンター機能確立に向けた活動にNCARの情報資源グループは取り組んでいる。
全国美術館収蔵品サーチ「SHŪZŌ」
文化庁のアートプラットフォーム事業(2018~2022年度)により、2021年3月に公開された日本全国の美術館・博物館が収蔵する作品のデータベース。収録範囲は日本近現代のアート作品で、各協力館から提供された情報に基づき、作家名、作品名、制作年、材質・技法、寸法・時間、所蔵先等の項目が記載されている。
メディア芸術データベース(MADB)
MADBはメディア芸術の作品が次の世代へと引き継がれていくためにマンガ・アニメーション・ゲーム・メディアアートの4部門について、作品情報や複数の連携機関での所蔵情報を収集・整備するもので、広く一般に公開しているデータベース。