技術的ユートピア主義に挑戦するメディアへの批評

没入型VR作品『シャドータイム』(原題:Shadowtime、脚本・監督 シスター・シルヴェスター、デニズ・トルタム)が現在開催中のSXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)で2024年3月10日に北米デビューする。第80回ベネチア国際映画祭でワールドプレミア上映され、アイ・ミュージアム、ジュネーブ国際映画祭、テッサロニキ国際映画祭などではすでに上映された。本作品はSXSWで、デジタル逃避主義と気候危機に対する批判的考察を交えながら、技術革新の核心に迫る。

adf-web-magazine-shadowtime-sxsw-1

Photo credit:
a VR Documentary by Sister Slyvester & Deniz Tortum, produced by Institute of Time,

「シャドウタイム」は両立しない2つの時間を同時に占める感覚を表現する造語で、シスター・シルヴェスターとデニズ・トルタムが脚本・演出、インスティテュート・オブ・タイムによって制作された。本作はこの二重の存在を通して観客を導き、参加者にデジタルとエコロジーの領域における自分の役割について考えさせる。

adf-web-magazine-shadowtime-sxsw-2

Shadowtime
Photo credit:
a VR Documentary by Sister Slyvester & Deniz Tortum, produced by Institute of Time,

adf-web-magazine-shadowtime-sxsw-3

Photo credit:
a VR Documentary by Sister Slyvester & Deniz Tortum, produced by Institute of Time,

adf-web-magazine-shadowtime-sxsw-4

Photo credit:
a VR Documentary by Sister Slyvester & Deniz Tortum, produced by Institute of Time,

SXSWはテックの先見者たちのメッカとして有名な音楽祭・映画祭・インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模イベントだが、『シャドウタイム』はメディアそのものを批評している。デジタルの逃避主義と具体的な環境問題を対比させながら、本作はテクノロジーの進歩が気候変動対策の緊急性を覆い隠してしまうことが多い現代において、私たちの優先順位を再考するにあたり一石を投じている。

adf-web-magazine-shadowtime-sxsw-5

Photo credit:
a VR Documentary by Sister Slyvester & Deniz Tortum, produced by Institute of Time,

adf-web-magazine-shadowtime-sxsw-6

Photo credit:
a VR Documentary by Sister Slyvester & Deniz Tortum, produced by Institute of Time,

adf-web-magazine-shadowtime-sxsw-7

Photo credit:
a VR Documentary by Sister Slyvester & Deniz Tortum, produced by Institute of Time,

本作はVRの可能性を詩的に探求する以上のものであり、気候危機の中でテクノロジーの役割を観客に再考させる内省的な旅である。デジタルな現実と物理的な現実が表裏一体となった世界を提示することで、このプロジェクトは私たちの世界の相互関連性と、地球のために行動可能な解決策を優先する必要性を強調している。

あらすじ

「あなたは同時に2つの世界にいる。体はもう一方の世界にあるが、心はこちらの世界にある。」バーチャルな世界に存在するということは、2つの身体、4つの手、2つの心を持つということ。この二重世界への不思議な案内人であるアルマは、気候危機、和解しがたい現実、避難場所としての仮想をめぐる問いを通じてあなたを導いてくれる…

シスター・シルヴェスター / Sister Sylvester

adf-web-magazine-shadowtime-sxsw-8

Sister Sylvester
Photo credit: Institute of Time

パフォーマンスとニューメディアの分野で活躍。デニズ・トルタムとの共同監督による最新作『Our Ark』、最新パフォーマンス『The Eagle and The Tortoise』は、ともにIDFAでプレミア上映され、国際ツアーを行った。共同読書体験となるインスタレーションやアートブックを制作し、現在は合成生物学に関する一連の作品を展開している。

デニズ・トルトゥム / Deniz Tortum

adf-web-magazine-shadowtime-sxsw-9

Deniz Tortum
Photo credit: Institute of Time

映画と没入型メディアを手がける。最新作『Our Ark』(シスター・シルヴェスターと共同監督、2021年)はIDFAでプレミア上映され、国際的に上映された。長編ドキュメンタリー『Phases of Matter』(2020年)はロッテルダム国際映画祭でプレミア上映され、イスタンブール映画祭とアンタルヤ映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を受賞。現在、地球工学、スピリチュアリズム、気候危機をめぐる一連の作品を開発中。

インスティテュート・オブ・タイム

ユトレヒトを拠点とする、ドキュメンタリー映画とXR体験を専門とする学際的な映画・ニューメディア会社。気候変動をめぐる創造的なプロジェクトに焦点を当て、ストーリーテリングの助けを借りて、私たちの現在の生活と不確かな未来に異なる視点をもたらすことを目指している。