人間本来の感覚を呼び覚ます体験
横須賀の無人島「猿島」を舞台に開催する芸術祭「Sense Island Research Events 2023」が、2023年12月2日(土)、12月9日(土)、12月16日(土)の3日間に開催される。夜の静寂と暗闇を感じながら点在するアート作品を巡り、人間本来の感覚を呼び覚ます体験ができる。2019年に「Sense Island - 感覚の島 - 暗闇の美術島」(Sense Island)として開始し、今年で4回目を数える。
Sense Islandは今の時代において、人間の生物としての能力を再認識するイベントとして、夜の無人島・猿島を参加者が回遊し、作品を通して視覚・聴覚・触覚・嗅覚を研ぎ澄ます機会を作り出してきた。2023年は、こうしたコンセプトはそのままに、今後のSense Islandをアップデートし、猿島から拡張していくため、プロデューサーやアーティストたちが、横須賀の地形、歴史、文化、産業のつながりを改めてリサーチし、今の時代に横須賀でSense Islandを開催する意義や意味を模索するリサーチイヤーと位置付けた。
本年はそのリサーチに基づき、Sense Islandの役割を再考して今後の方向性をアーティストやアカデミア、参加者とともに考える参加型の3つの企画を、12月に横須賀市街と猿島で開催する。
Sense Island プロデューサー 齋藤 精一(パノラマティクス主宰)コメント
2019年より横須賀の無人島・猿島で開催してきたSense Islandは暗闇の中で人間の感覚を取り戻す芸術祭として3回に渡り実施してきました。このSense Islandは、アートを通して横須賀を観る・知る芸術祭という枠を超え、横須賀の歴史学や地政学を基軸にアートとコンテクストを検証する新しいプラットフォームに生まれ変わるよう議論を重ねています。
豊かな自然が存在し、海外との交流の要として重要な位置にあり、多くの産業や歴史の分岐点にもなった横須賀が現在のように多様性を持った都市になったのはなぜなのか、もう一度見つめ直し、アートを通じたプラットフォームとして進化させたいと考えています。
その大きなきっかけとなる2023年のSense Island Re-Creation(再定義の年)は、横須賀とアートシーンを考えるための有識者によるトーク、猿島での一夜限りの入島イベント、横須賀を散策するフィールドワークの3つのプログラムを展開し、アートとは何か、芸術祭の意義、横須賀の可能性を探ります。
今回の開催をきっかけに、参加された皆さまが横須賀や横須賀で繰り広げられるアートシーンの活動人口として関わっていただければ幸いです。
企画内容
Sense Island トーク 国内外の事例から横須賀のアートシーンを考える
国内外のアートシーンの動向についてさまざまな視点から議論し、Sense Islandを横須賀で開催する意義や展望を巡らせる。ファシリテーターに齋藤精一、ゲストに木ノ下智恵子、山出淳也、菊池宏子、ゴッドスコーピオン、中村寛を迎え考察する。
日時 | 12月2日(土)13:00 - 17:00(開場 12:00) |
会場 | 横須賀市自然・人文博物館 1F 講座室 |
料金 | 無料(申し込み要) |
定員 | 80名 |
申し込み | https://peatix.com/event/3764502/ |
Sense Island 夜の猿島上陸 一夜限りの暗闇の無人島・猿島上陸体験
来年の本開催に向けて横須賀の地政学的な視点を取り入れたリサーチ結果を猿島に集約。猿島内に一夜限定で設置される作品やメディアを通して、猿島へのさらなる関心を深める。参加アーティストは齋藤 精一、TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH(河原 孝典、金 秋雨、小山 泰介、SO、築山 礁太、村田 啓、山本 華、Petra Wang)。
日時 | 12月9日(土)15:30 - 19:30 |
集合場所 | 三笠ターミナル / 猿島ビジターセンター |
料金 | 無料 |
定員 | 100名 |
プログラム | 島内ガイドツアー/レセプション/音楽ライブ(予定) |
申し込み | https://tinyurl.com/3jpn7c38 |
Sense Island フィールドワーク 横須賀を巡り、まちの可能性を共に考える
来年のSense Islandの想定コースをともに巡る。アーティストにどのような視点、文脈で横須賀を捉えてもらいたいか、プロデューサーの齋藤精一や文化人類学者の中村寛教授、専門のガイドとともに公開しながら考える。ティボディエ邸、観音崎、浦賀ドックなどを、ガイドとともに横須賀を地理的性質から紐解き、地政学的なコンテクストをどのように読み解いていくのかを解説し、ときには公開議論しながら実践するフィールドワーク。ガイドは齋藤 精一、中村 寛。
日時 | 12月16日(土)12:00 - 18:00 |
集合場所 | よこすか近代遺産ミュージアム ティボディエ邸 |
料金 | 無料 |
定員 | 30 名 |
申し込み | https://peatix.com/event/3764538/ |
登壇者・アーティスト
齋藤 精一(Sense Islandプロデューサー、パノラマティクス主宰)
1975年神奈川県生まれ。建築デザインをコロンビア大学建築学科(MSAAD)で学び、2000年からニューヨークで活動を開始。Omnicom Group傘下のArnell Groupにてクリエイティブ職に携わり、2003年の越後妻有アートトリエンナーレでのアーティスト選出を機に帰国。2006年 株式会社ライゾマティクス(現:株式会社アブストラクトエンジン)を設立。社内アーキテクチャー部門『パノラマティクス』を率い、現在では行政や企業などの企画、実装アドバイザーも数多く行う。
2023年グッドデザイン賞審査委員委員長。2025年大阪・関西万博EXPO共創プログラムディレクター。2023年 D&AD賞 デジタルデザイン部門審査部門長。
菊池宏子(アーティスト)
東京生まれ。ボストン大学芸術学科卒業、米国タフツ大学大学院博士前期課程修了。米国在住20年を経て、2011年、東日本大震災を機に東京に戻り現在に至る。パフォーマンスアート、特にフルクサス、社会彫刻的な概念に影響を受け、多岐にわたり米国・南米にてソロ活動、そして、アートを触媒と考え、コミュニティ・エンゲージメントを生かしたアートプロジェクト、コミュニティ再生事業、学校づくりなど、国内外で多数携わる。
木ノ下智恵子(大阪大学21世紀懐徳堂 准教授、SCARTS 事業統括ディレクター)
神戸芸術工科大学大学院修了。専門は現代芸術、文化政策、事業プロデュース等。神戸アートビレッジセンターを経て現職。大阪大学では社学共創事業に従事。恵比寿映像祭オフサイトキュレーター、MASKキュレーター、岡山芸術交流パブリックプログラムディレクター、SCARTS事業統括ディレクターなどがある。
ゴッドスコーピオン(メディアアーティスト、株式会社Psychic VR Lab Senior Art Director)
メディアアーティスト。主に形而上学や宗教哲学、テクノロジーを題材に、時間軸と空間軸のフレームの変化をテーマにした作品を制作。作品は都市や屋外、屋内、身体といった様々な空間で展開され、XR技術を利用したマルチメディア、横断的な作品を手がけている。XRプラットフォーム『STYLY』を提供するPsychic VR Lab Co., Ltd. のファウンダーメンバー、シニアアートディレクターとしても活動している。
中村寛(多摩美術大学リベラルアーツセンター教授、人類学者)
文化人類学者。アトリエ・アンソロポロジー合同会社代表。多摩美術大学教授。「周縁」における暴力、社会的痛苦、反暴力の文化表現、脱暴力のソーシャル・デザインなどのテーマに取り組む。著書に『アメリカの〈周縁〉をあるく――旅する人類学』(平凡社、2021)、『残響のハーレム――ストリートに生きるムスリムたちの声』(共和国、2015)。編著に『芸術の授業――Behind Creativity』(弘文堂、2016)。訳書に『アップタウン・キッズ――ニューヨーク・ハーレムの公営団地とストリート文化』(テリー・ウィリアムズ&ウィリアム・コーンブルム著、大月書店、2010)。
山出淳也(Yamaide Art Office 株式会社 代表取締役、アーティスト、BEPPU PROJECTファウンダー)
文化庁在外研修員としてパリに滞在(2002~04年)するなど、国内外でのアーティストとしてのキャリアを経て、2005年にBEPPU PROJECTを設立。以降、BEPPU PROJECTが企画し実現した1,000以上の取り組み全てに関わり、国内有数のアートNPOに育てる。
2022年3月、BEPPU PROJECTの代表を退任し、Yamaide Art Office 株式会社を設立。
TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH
「都市の多角的なリサーチ」、「現代写真の実践的な探求」、「写真文化の発展的な研究」などをミッションとして、未だ見ぬ都市と社会と人びとの姿を可視化し、見出されたヴィジョンを未来へ受け継ぐことを目的としたアーティスト・コレクティブ。2018年の設立以来、広く写真・映像表現に携わる人々との有機的かつ水平的な協働を通じて、アートプロジェクトやリサーチプロジェクト、企業・行政との共同プロジェクトやコミッションワーク、国際的な文化交流、教育プログラムや研究会など、多角的な活動を展開している。
河原孝典
1988年神奈川県生まれ。2019年日本写真芸術専門学校卒業。フリーのカメラマンとして活動すると同時に、人間の根底にある共通点を探し求め、近年アフリカ、東南アジア、南米の人々の暮らしを撮影している。ヒトを取り巻く環境への興味から自然の風景も撮影。流氷や海をテーマにした作品にも取り組んでいる。
金秋雨
キュレーター。1995年上海生まれ、東京在住。non-syntax主催。東京藝術大学国際芸術創造科アートプロデュース専攻博士後期課程在籍中。日本大学芸術学部美術学科助教授。近年メインに、視覚芸術と鑑賞者の関係性をリサーチする。
小山泰介
写真家。生物学や自然環境について学んだ経験を背景に、実験的なアプローチによる写真作品や映像作品を発表している。文化庁新進芸術家海外研修制度により2014年から2年間ロンドンに滞在し、その後2017年までアムステルダムを拠点に活動。2018年より、現代の写真・映像表現によって都市と社会を考察する「TOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH PROJECT」を主宰。
SO
グラフィックデザイナー、橋詰宗による音響研究活動。都市や自然環境に点在する音の諸要素を調査して分解や再結合、音響処理を行いその過程を記録する。映像関連の音響・楽曲制作、サウンドロゴのデザインも行う。
築山礁太
写真家。1997年東京生まれ。2019年日本写真芸術専門学校卒業。見ることへの関心から立体的なアプローチを取り入れた作品を制作するなど、平面や立体などの様々な形態を横断しながら写真作品の制作を行っている。 個人の活動と共にTOKYO PHOTOGRAPHIC RESEARCH のアシスタントディレクターや東京都東大和市にあるプロジェクトスペース兼飲食店「phil」にて企画、運営、シェフとしても活動している。
村田啓
1990年生まれ。現在東京を拠点に活動。 2016年東京藝術大学大学院美術研究科絵画油画専攻修了。視覚やスケールの変容への興味を基とした写真や映像を用いた作品制作を行っている。近年の展示に、「between / of」(The 5th Floor東京、2022)、「VOCA展2022」(上野の森美術館、東京、2022)、「So long so far」(People、東京、2022)など。
山本華
アーティスト。1999年千葉県市川市出身。2019年にアメリカ・ニューヨーク滞在を経て、2022年多摩美術大学情報デザイン学科メディア芸術コース卒業。メディアを横断しながら社会の中でイメージがもたらす作用について制作を行っている。普遍的な習慣から全く新しい経験まで、関心の対象は常に移り変わるものの、主に自分を眩惑させる事物・現象・言説に新しい形を与えようと試みている。
Petra Wang
文化人類学研究。モンゴル高原生まれ、東京在住。近年自他関係やリバタリアニズムをメインにリサーチする。2023年から多摩美術大学在籍。
「Sense Island Research Events 2023」開催概要
日程 | 2023年12月2日(土)、12月9日(土)、12月16日(土) |
会場 | 横須賀市猿島、横須賀市自然・人文博物館、横須賀市街 |
主催 | Sense Island 実行委員会(横須賀集客促進・魅力発信実行委員会、株式会社アブストラクトエンジン、株式会社トライアングル) |
URL | https://senseisland.com/ |