陶芸、テキスタイル、写真、工芸など10組のアーティストの作品から、ものづくりの現在地を探る
「民衆のための芸術と今日の工芸」が、OIL by 美術手帖ギャラリー(渋谷)とBaBaBa(高田馬場)で2023年11月10日(金)から11月27日(月)まで開催される。大阪を拠点に活動するクリエイティブユニット・grafとOIL by 美術手帖ギャラリーの共同キュレーションとなる本展では、日本各地を拠点に活躍する10組のアーティストを紹介する。本展出品作品(一部をのぞく)は、会場および、アートのオンラインマーケットプレイス「OIL by 美術⼿帖」にて販売される。
かつて、ウィリアム・モリスが唱えた「アーツ・アンド・クラフツ運動」は、手工芸の復興や人間と物事との社会調和をこころざし、大量生産や資本主義への疑念を元に、芸術のあり方や職人の技術を基礎とするための活動であった。それらの思想から影響を受け、日本でも民藝運動をはじめとする様々な活動が、現在に至るまで行われている。常に変化していく暮らしのなかで、驚きや発見に胸を踊らせ、新しい価値を模索し続け、何を基準に豊かな暮らしを定義するのか、素晴らしい表現とは何かを見出すことに挑戦していく。
「民衆のための芸術と今日の工芸」展では、審美の基準を自分自身で切り開いていく、社会へコミットするための方法論の見つけ方を、展覧会という形で提案。参加アーティストは、elements、河合浩、木下理子、サイネンショー、新工芸舎、丹野杏香、TROPE、野田ジャスミン、濱田祐史、YUKI HIDANOの10組。本企画では、「民衆のための芸術」と「今日の工芸」を制作する、日本各地で活動するアーティストを紹介する。かつての芸術運動は、昨今に至るまでにどのような影響を与え継承されてきたのか。現代を生きるアーティストたちの作品や思考に触れ、ものづくりや表現について、今一度熟考するためのきっかけとなる。
出展作家プロフィール
elements / エレメンツ
2015年に井上真彦、置田陽介、横山道雄により結成された、ものづくりの集団によるデザインプロジェクト。「elements」は、ものづくりをするプロセスにおいて、私たちの周りに存在する様々な現象や要素を探求していくプロジェクト。それは、私たちがこの世界とどのように関わってきたのかを解剖し、自分たちも世界のひとつのエレメントであることを実感する試みでもある。
河合浩 / Yutaka Kawai
画家。東京都生まれ。栃木県益子在住。CDジャケット、アパレル、雑誌等へのアートワークを手がけるほか、日々制作し、全国各地で展示活動中。
木下理子 / Riko Kinoshita
美術作家。1994年東京都⽣まれ。2019年武蔵野美術⼤学⼤学院造形研究科修⼠課程美術専攻油絵コース修了。サイアノタイプ(⽇光写真)の技法を⽤いたドローイング、⾝近な素材を使った⽴体、あるいはインスタレーションのような空間的な⼿法で、未知の世界や捉えきれない対象を引き寄せるアプローチとしての作品群を制作している。近年の個展に、22年「You are what you perceive」(東塔堂、東京)、「Human Humor」(児⽟画廊、東京)、23年「粒⼦」(Gallery MARUNI- AKIYA、東京)など。
サイネンショー / Sainensho
2013年より関西を拠点に活動。陶芸家の松井利夫を中心に、芸術家や有志が集まり、使われなくなった引き出物やノベルティー、安価な大量生産品など、回収の呼びかけに応じて集まった「不要陶器」を再び焼くことで、元の価値や用途を変容をさせ、再誕生させる試み。
新工芸舎 / Shinkougeisha
新工芸舎は、専門分化/システム化の進んだ工業社会に対するオルタナティブとして、専門分野の再統合や工芸的な素材との対話を標榜し、デジタル/アナログの垣根のない新しいものづくりの姿を構想、実践している。特に樹脂は工業的な生産を象徴とする素材で、長らく量産を前提として扱われてきたが、3Dプリンタの普及した社会では、限りなく工芸的な規模で扱える素材になった。3Dプリンタなどのデジタル工作機械が、モノの生産活動を個人的な営みへと還元しつつあるなかで、それらが育む新しい人間像や生き方の変化について考え、活動している。
丹野杏香 / Kyoka Tanno
1994年生まれ。東京都在住。書籍装画、パッケージ、挿絵などのアートワークを手がけるほか、日々作品を制作し展示活動を行っている。
野田ジャスミン / Jusmin Noda
1996年タイ生まれ。器物作品および、それらを用いたインスタレーション作品を制作。多様式な現代工芸のカタチを明確にすることを目的に、工芸性のオリジンとも言える器物造形を通じて「工芸とアート」の関わりについて言及している。「ghost」シリーズでは、素材表現由来の「割れ」を用いて、器物造形から用途のみを抜き出し、工芸の持つ「用途と表現」の二面性の間にあるアンビバレントな表現を行なっている。主な個展に2020年「湖面に沈む」(KITAHAMAgallery、大阪)、23年「comet 彗星」(阪急メンズ東京B-OWND gallery、東京)。 近年の展覧会に、21年「間をぬく、或いは」(建仁寺両足院、京都)、22年「ゆらめくいきものたち」(galleryTerra-S、京都)、「明滅するクオリア」(TENSHADAI、京都) ほか。
濱田祐史 / Yuji Hamada
1979年大阪府生まれ。2003年日本大学芸術学部写真学科卒業。東京を拠点に国内外で作品を発表している。写真の原理に基づき概念を構築し、自身の記憶、偶然などを介して写真の多様な表現機能に根ざしたパフォーマティブな作品を制作。近年の主な個展に、22年「Incidence and Reflection」(PGI、東京)、展覧会に19年「⾄近距離の宇宙 ⽇本の新進作家 vol.16」(東京都写真美術館) 、20年「沈潜と蒸留」(ミュゼ浜⼝陽三・ヤマサコレクション、東京)など。
YUKI HIDANO / ヒダノユキ
テキスタイルアーティスト。武蔵野美術大学工芸工業デザイン学科卒業。様々な実験を繰り返すことで得たマテリアルの知識や特徴を、 独自の視点で活かし、作品制作を行う。主な技法は織りを用いており、原始的な制作方法でありながら、マテリアルやプロセスを工夫することで、色々な媒体へと展開が可能になることを成果物を通して発表している。
TROPE / トロープ
あらかじめ決められた用途や役割を与えられていない、使い手の想像力を伴うことで機能を見出すプロダクトシリーズ。物や情報があふれる今の時代に必要なものは何か?を考え、2011年から開始。2018年からは建築家、哲学者、木工家など異なる領域で活躍している方々とTROPEの概念を再構築しながら、展覧会やワークショップを経て実験と検証を繰り返している。これまでのプロダクトに大切だとされる機能ではなく、アイディアを引き出す知恵、サバイブのための道具づくりを目指し、誤解を恐れずに言えば「不便な道具」を作るということを考え、生まれたプロダクト。
「民衆のための芸術と今日の工芸」展開催概要
会期 | 2023年11月10日(金)~11月27日(月)※会場により定休日が異なる |
会場 | OIL by 美術手帖ギャラリー(渋谷)、BaBaBa(高田馬場) |
主催 | graf、OIL by 美術手帖ギャラリー |
共催 | BaBaBa |