壮大な物語を学ぶ場を提供し、未来へ語り継ぐ
X.Cスタジオが完成させた革新的なコンセプチュアル・プロジェクト「不確実性の博物館(The Museum of Uncertainty)」は、ロサンゼルスのラ・ブレア・タールピット(La Brea Tar Pits)に位置する。ラ・ブレア・タールピットは19世紀に近隣のソルトレイク油田から地価の断層を伝って地表に到達した石油の形質分が蒸発し、伴って噴出した水の作用で生成された天然アスファルトの池である。表面は水に覆われ、この水を求めて太古の動物たちが集まり、溺れてタールに閉じ込められた歴史を持つ。本博物館は、タールの下に隠された深い謎と歴史的意義を探求し、発掘、発見、保存をテーマとしたプロジェクトである。
このプロジェクトは3つの異なる構造からなり、来館者は多面的な体験ができる。ウィルシャー・ブルバードから出発するとタールの下に沈む疑似体験の旅を経て、最終的に博物館の中央集会所に到着。館内では化石の魅力的な展示に出会うことができる。研究棟はさまざまな発掘現場とつながっており、迷路のような通路になっている。さらに施設棟では、広大な発掘現場を眺めながら、レクチャーに参加したり学ぶことができる。
発掘プロセス特有の不確実性がそのスリルを押し上げ、このプロジェクトの中心と捉えられている。タールの中に隠された物語を読み解き明らかにすることを目的に、これらの魅惑的な物語を再解釈し未来の世代と共有することができる。ラボでの調査によって具現化されたタール坑の歴史解明は心を躍らせるもので、それぞれの骨に隠された物語が徐々に明らかになり、タールピットの古代の特徴がクローズアップされる。
「不確実性の博物館」では、訪問者は探検と啓蒙の旅に誘われ、ラ・ブレア・タールピットの過去の壮大な物語に引き込まれる。本プロジェクトは、これらの物語を保存し語り継ぐことで、何世代にもわたってインスピレーションを与え、教育し続けることを約束するものとなっている。
X.Cスタジオ
シュエチェン・チェンによって設立された、ニューヨークを拠点とするダイナミックな建築・デザイン事務所。建築、プロダクトデザイン、ビジュアルアートへの革新的なアプローチを専門とする本スタジオは、都市環境の複雑なダイナミクスと繊細な体験からインスピレーションを得ている。革新への深いコミットメントとともに、芸術的な目的を再定義し、人々がどのように環境を認識し、交流し、豊かにしていくかを高めることを目指している。