厳選された素材が安らぎを与えるラグジュアリーな湖畔の家

ケベック州ローレンシャン地方のレブドール湖畔に建つ「ブレイク・レジデンス」は、水辺からのアプローチと陸からのアプローチとでイメージががらりと変わる、表情豊かな家である。3層吹き抜けの広々とした贅沢な空間が、小さなコミュニティの集いの場ともなり、近隣の人々を温かく迎え入れる。先祖代々の土地に終の棲家を建てたいという家主の願いを叶えた夢の家である。

adf-web-magazine-break-residence-mu-architecture-1

Photo credit: Ulysse Lemerise Bouchard

2つの顔を持つ家

このプロジェクトは、敷地が狭かったため、既存住宅が建つ土地に新しい住宅を建てるという意欲的な試みとなった。道路に面したファサードと反対側の湖に面したファサードはまったく異なる表情を見せ、この家の持つふたつの性格を表している。道路側には、互い違いに重なった岩のようなボリュームがそびえている。傾斜した地形のため、道路からは2階分しか見えず、反対側の湖にアクセスできる庭の階層は隠されている。彫刻的なメインエントランスは、2階建てのキャノピーの下にあり、岩のようなボリュームの間に刻まれ、まるで洞窟のようである。岩の合間から温かみのある空間を演出する、家の中央に位置する開口部からは、住居の回遊性や集いの空間が見え、この場所の和やかさを強調している。

adf-web-magazine-break-residence-mu-architecture-3

Photo credit: Ulysse Lemerise Bouchard

湖畔に面した側は、開放的で外向的な、全く異なる個性を示している。屋根の張り出しを大きくし、角度をつけた軒天井に使用したゴールドのアクセントが湖面の動きを映し出し、この家がまるで帆を広げている船のように見える。

adf-web-magazine-break-residence-mu-architecture-7

Photo credit: Ulysse Lemerise Bouchard

天然素材による美しさと安らぎ

家の中に入ると、そこは静けさと心地よさに支配された空間である。一日を通して日の光に包まれ、湖に向かって大きく開かれたこの住宅には、心を静めて無心になれる空気感がある。インテリア建築に使用されている厳選素材のミネラルの風合いが、安らぎの空間づくりに一役買っている。

adf-web-magazine-break-residence-mu-architecture-8

Photo credit: Ulysse Lemerise Bouchard

この住宅の中心には、石造りの壁がマストのように立っており、住宅を固定する要素として機能している。3つの暖炉を備え、3つの階層を統合する、空間セパレーターであると同時に、空間を建築的に統合するエレメントでもある。内外に存在するこの壁は、軒天井に使用された木材と同様に内部の空間を外部に連続させている。このように、流動的で優美なジェスチャーは、プロジェクトに一貫性と安定感を与えている。

adf-web-magazine-break-residence-mu-architecture-16

Photo credit: Ulysse Lemerise Bouchard

adf-web-magazine-break-residence-mu-architecture-15

Photo credit: Ulysse Lemerise Bouchard

厳選されたひとつひとつの素材は、それぞれが、家に彩りと深みをプラスする重要な要素となっている。水の色をイメージした石英の表情豊かなライン、スレートの質感、温かみのあるオークやメープルの家具、メープルのフローリング、カナダ産のヘムロックの天井など、石と木の風合いがベースとなり、年月を経て美しくなる、時代を超えた建築を目指している。

adf-web-magazine-break-residence-mu-architecture-18

Photo credit: Ulysse Lemerise Bouchard

adf-web-magazine-break-residence-mu-architecture-12

Photo credit: Ulysse Lemerise Bouchard

ここでは、ラグジュアリーな空間そのものがおもてなしである。エレベーターでアクセスできる各階には、サービスエリア、コーヒーステーション、バーがあり、各部屋にはバスルームとバルコニーが完備されている。レジデンス内には、瞑想的なラウンジやブドワール(プライベートなスイートルーム)があり、息を呑むような眺望と静寂の中で、ゆったりとした時間を過ごすことができるのだ。

adf-web-magazine-break-residence-mu-architecture-17

Photo credit: Ulysse Lemerise Bouchard

adf-web-magazine-break-residence-mu-architecture-10

Photo credit: Ulysse Lemerise Bouchard

錨を下ろす岩のように、この家は、もてなしの心、寛容さ、快適さ、そして自然やそのすべての要素の美しさへの賛歌なのである。

adf-web-magazine-break-residence-mu-architecture-22

Photo credit: Ulysse Lemerise Bouchard

MUアーキテクチャーについて

2010年にシャルル・コーテとジャン・セバスチャン・ヘルによってモントリオールに設立されたMU Architectureは、エレガントな現代的住宅、人間指向でクリエイティブなオフィス空間、大規模な前衛的プロジェクトなどで知られている。コーテとヘルのふたりは、世界的に有名な建築事務所での経験を生かし、モントリオール、ウィーン、バルセロナ、ドバイで最高水準の経験を積んで実力を伸ばしてきた。ふたりが率いるチームは、最新の設計技術を駆使し、無限の体験を生み出す空間や構造を造形する。洗練された独自のスタイルは、プロジェクトごとに新たな形となって現れている。才能と情熱にあふれたMUアーキテクツのチームが手掛けた作品は、何度も国際的な舞台で発表され、世界的な賞を受賞するなど、脚光を浴びてきた。