NYのミッドセンチュリータワーがサステナブルなランドマークに大変身

1960年代のニューヨークの広告業界を描いた大ヒットドラマ「マッドメン」。このドラマの舞台となったのが、1959年に建設された、NYマンハッタンのミッドタウンにあるTime & Life Buildingである。2007年のドラマ放送以来、若い世代にも注目されるようになったビルだが、その注目の高まりとは裏腹に、ニューヨークの不動産市場では老朽化による競争力低下に苦しんでいた。非効率な外装、旧式のビルシステム、そして時代遅れのロビー。全てが、周辺の最新・最先端のタワービルには及ばなかった。そしてマッドメンが最終シーズンの放送を迎えた2014年、プライマリ・テナントが他のビルへの移転を表明したことを受け、ビルを所有するロックフェラーグループは、建築ファームのペイ・コブ・フリード&パートナーズに大規模改修を依頼した。

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Reconfigured plaza and east facade, Photo credit: Albert Vecerka/ESTO

ペイ・コブ・フリード&パートナーズは、ビルの現状を入念に調査したうえで、建設当初の建築家の意図をくみ取りながら、建設時から今に至るまでの経年変化を理解するよう努めた。調査で得た情報をもとに、サステナビリティの専門性とオフィススペースデザインの実績で得たノウハウを駆使し、再生、改善、そして現代化に向けたプランを構築していった。

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View west along 50th Street, Photo credit: Albert Vecerka/ESTO

「1271アベニュー・オブ・アメリカ」として再生したビルは、テナント契約率が、完成前の時点ですでに99%に達していた。本プロジェクトでは、オーナーやユーザーだけでなく、社会、ひいては地球のためになることを基本概念としていた。取り壊すのではなく、既存のものをできる限り活かすという戦略の元に、21世紀の働き方が求める空間を追求したことが、成功の要因となったのである。

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View north along Avenue of the Americas, Photo credit: Albert Vecerka/ESTO

本プロジェクトの主要工程となったのが、ファサードの改装である。既存のビルは、スパンドレルガラス(透過性のない外壁構造)が透過性のある窓ガラスよりも大きな面積を占めていた。構造はそのままで、窓ガラス部分とスパンドレル部分を入れ替えることで、透過性のある窓面積が50%以上増加した。その結果、ビル全体の消費エネルギーを40%以上削減することができた。

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Before and after: 50% increase in vision glass, Photo credit: Pei Cobb Freed & Partners

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Rhythm of facade is maintained while area of vision glass is increased, Photo credit: Pei Cobb Freed & Partners

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Process of recladding with new high-performance, unitized curtain wall system, Photo credit: Pei Cobb Freed & Partners

新しい地域法に沿った競争力のある物件にするため、資産価値と市場価値の向上に働きかけるアプローチに加え、施工性やロジスティクスのコストドライバー分析は必須となる。「ビルのオーナーがなかなか実感できない効果、例えば燃料価格やカスタマイゼーション、予期せぬコンディションなどを明示することが大事なのです。」と、ペイ・コブ・フリード&パートナーズで脱炭素・再生を担当するチームのリーダー、ケイト・ボイザは言う。

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Before and after: new canopy over reopened breezeway, Photo credit: Albert Vecerka/ESTO

ニューヨークのランドマークに指定された、ミッドセンチュリーの雰囲気が漂うロビーは、建設当初のデザインコンセプトを尊重しながら、多くのテナントに対応するため、大きな受付スペースを設けた広々とした空間に復元。更に、ビルシステムのアップデートや、安全性の向上、エレベーターシステムの更新、そしてエレベーター内のインテリアの刷新が行われた。ペイ・コブ・フリード&パートナーズが培ってきた高いデザイン性と技術力で、審美的な妥協はせず、技術的にも文句のないクオリティが達成できている。

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Before and after: expanded and reconfigured south lobby, Photo credit: Albert Vecerka/ESTO

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Redesigned and modernized elevator cabs, Photo credit: Albert Vecerka/ESTO

「改装を経て、より活気にあふれた魅力的な職場環境が実現したが、それだけではない。」と、プロジェクトのデザイン責任者、クリス・ジェンドは言う。「既存の噴水を段差のある座れるランドスケープの一部として再利用したり、ダイナミックな片持ち梁の天蓋を増設するなど、ラジオ・ミュージック・ホールの向かいに位置するイースト・プラザを、人々が快適に過ごせるヒューマンスケールのオープンな空間へと大胆に変身させました。このように公共空間の改造を通して、都市の一部を担う建物の役割を認識させられました。」と続ける。テナント企業だけでなく、周囲の環境や人々にもメリットのある改築は、建物の商業価値を更に高めるのである。

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Before and after: Reimagined plaza, Photo credit: Albert Vecerka/ESTO

ビルの完成を待たずして、真っ先にテナントとして名乗りを上げたのが、メジャー・リーグ・ベースボール(MLB)だ。この最新ビル内に、オフィススペースと、リテールエリアの特等席にフラッグシップストアをオープンした。

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South plaza and entrances, looking east along West 50th Street, Photo credit: Albert Vecerka/ESTO

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Reimagined plaza across Avenue of the Americas from Radio City Music Hall, looking south, Photo credit: Albert Vecerka/ESTO

「1271アベニュー・オブ・アメリカ」として生まれ変わった、「マッドメン」の時代を象徴する愛すべきアイコンだったビルは、過去の建物がサステナブルな未来づくりに貢献できることを証明している。ペイ・コブ・フリード&パートナーズは、デザインパートナーのイヴォン・ゼトと共に、今後も老朽化したビルの再生に取り組んでく。専門知識と技術を駆使し、より高機能の設備を備えたハイブリッドで可動性のある職場環境の提供を、ビルのゼロエミッション化を達成しながら実現していく。イヴォン・ゼトは、「建築家として地球の生態系に貢献できる、意味のある活動だと考えています。」と述べている。

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View south along Avenue of the Americas, Photo credit: Albert Vecerka/ESTO

ペイ・コブ・フリード&パートナーズについて

ニューヨークの事務所を拠点に、世界の100都市でプロジェクトを手掛けてきたペイ・コブ・フリード&パートナーズは、世界屈指の建築設計事務所である。卓越したデザイン性とサステナビリティの精神を尊重する姿勢が評価されており、300を超える主要デザインアワードを受賞している。


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