ミニマルデザインで豊かなライフスタイルを提案する複合建築「白金プロジェクト」
建築家の佐々木龍一が率いる、佐々木設計事務所が手掛けた複合ビル「白金プロジェクト」が、このたび「アーキテクチャー・マスター・プライズ賞2021」の複合施設カテゴリーでベストオブベストを受賞した。本アワードは、建築、インテリア、ランドスケープ、プロダクト、写真などの分野において、クリエイティブで革新的なデザインを顕彰する世界的なアワード。40以上のカテゴリーに分かれており、昨年は1,500以上の応募があった。
白金プロジェクト
東京の中心、港区白金に建つ集合住宅・店舗・事務所の複合ビル「白金プロジェクト」。敷地は、古川の南に延びる五の橋通りの四差路角地に位置する。五の橋通りは、昔ながらの商店街の雰囲気を持ちながらも道幅は狭くなく、道に面した建物の外観を引きで見ることができる。そのため、街角でひと際目を引く、アイコニックな建物にするよう意識したデザインが求められた。
壁式RC造5階建ての建物の外装はコンクリート打放し壁で、コンクリート面が揺らぎを見せるように渦巻状に所々シフティングしている。この揺らぐコンクリート面のファサードデザインにより、路上に落ちる影も変化に富み、季節、時間で様々な表情が見られる。また、エントランスに設けたステンレスバイブレーション貼り壁面にも角度を持たせることで、四差路を行き交う車や自転車、人々がより多く映し出される。白金の賑やかな街に相応しく、またその活気を映し出す世界を、街の人々が垣間見られるようなデザインとなっている。
1階にはガラスの引き戸から入るレストランがあり、2階から4階は各階に2戸ずつ住居が設計されている。4階と5階は階段で繋がったメゾネット構造で、オフィススペースとなっている。各住居は、ワンルームから1ベッドルームタイプで、正方形に大きくかたどった開口部により空間のひろがりや光、風の入り方などに配慮した設計となっている。また、1LDK以上の広さの住戸ではベッドルームとリビングルームの仕切りが可動壁となっており、連続して一体的に使用することも可能。それぞれの住まい手により、リビング、ダイニング、ベッドルームを自在に変化させることが出来る空間は、白色壁とコンクリート打放し壁の構成により、素材のコントラストが際立っている。無駄をそぎ落としたシンプルなデザインと、多様で自由度の高い空間構成を実現させるための工夫が随所に見られる。また天井の高さを3.7Mとしたロフトスペース付きメゾネットタイプの事務所は、居住も可能な空間とした。メインフロア、ロフトスペース 、ミーテイングスペース、キッチン、収納室、ユニットバス、屋外テラスにより多様な屋内外の空間を享受できる。ミニマリズムを基調に、素材と大らかな空間構成により、居住者が主人公となる豊かなライフスタイルを提案している。
佐々木設計事務所について
佐々木設計事務所は、建築家 佐々木龍一が主宰する建築設計事務所。東京を拠点に、文化施設、音楽ホールから集合住宅、ホテル、店舗、テナントビルなどの商業施設まで、多くのビルディングタイプの設計およびコンサルティング事業を展開している。プロジェクトを実践するにあたり、常に時代性を意識し、プロジェクトの位置付けを再解釈し続けて発展させるよう心がけている。
2021年は、イギリスDezeenの アーキテクト・オブ・ザ・イヤーのベスト21(ロングリスト)に選出や、世界最大の建築フェスティバルであるWAF賞のファイナリスト作品に4作品が選出(4作品の選出は、世界第5位)され、イタリア・プラン賞ではオフィス・ビジネス施設カテゴリー1等のWINNER受賞、アメリカのアーキテクチャー・マスター・プライズ賞では、BEST OF BEST賞、WINNER賞の受賞というものを同時に評価を受けた唯一の日本の建築設計事務所である。
佐々木龍一プロフィール
建築家 一級建築士 佐々木設計事務所代表取締役
シカゴのイリノイ工科大学でロナルド・クレック、ジョン・ローナン、ニューヨークのコロンビア大学大学院でハニ・ラシッド、リズ・アン・クーチャーに師事。久米設計では、8年間の実務経験を積み、その中で日本建築学会賞(作品)「北上市文化交流センター さくらホール」の建築担当を経ている。
- 1970 東京都生まれ
- 1993 イリノイ工科大学建築学部 「ハロルド・シフ賞」受賞
- 1994 イリノイ工科大学建築学部卒業
- 1995 コロンビア大学大学院建築・計画・保存学部AAD修了
- 1994-1995 アシンプトート・アーキテクチュア
- 1996 株式会社久米設計/Kume Sekkei Co.,Ltd.
- 2004 株式会社佐々木設計事務所/Sasaki Inc., Architects & Engineers
- 2005 英文会社名変更/Founded for Sasaki Architecture
- 2008 千葉大学工学部建築学科 非常勤講師