ソノマに再生するパビリオン ワインと風景、そして再生の物語

カリフォルニア州グレン・エレンの緩やかなブドウ畑に佇む、テリー&テリー・アーキテクチャーの手がけたミニマルなパビリオン「グレン・エレン・パビリオン」は、静かなワインテイスティングの場であると同時に、プライベートレジデンスのプールハウス。この建築には、深い再生の物語がある。2017年、カリフォルニア史上最悪級のタブス火災によって、邸宅全体が焼失、プールとブドウ畑だけが辛うじて残った。そして今、この新しい建物は、風景を称え、人間の回復力を象徴する存在として立っている。

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Detail of roof at pool side.
Photo credit: TTA

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Northwest side view
Photo credit: TTA

敷地はグレン・エレン東側の尾根に位置し、ソノマ・バレー一帯からナパ・バレーの一部までを見渡す雄大な眺望を誇る。新たに再建された主屋とプールエリアは、尾根からやや外れた場所に慎重に配置され、風や日差しから守られている。主屋から南へ伸びるようにパビリオンが設けられ、屋外空間を軸として建築と丘陵地形を自然につなげている。

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Detail of roof connection to concrete wall
Photo credit: TTA

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Detail of vineyard side deck
Photo credit: TTA

デザインは敷地の緩やかな傾斜に寄り添いながら、周囲と一体化するように構成されている。テラスの仕上げには玄武岩の石畳を採用し、構造体にはコンクリート、屋根には立はぜ金属屋根を使用。いずれも美的意図と環境的配慮を両立させ、特に耐火性への対策が徹底されている。

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View looking toward Napa valley through pavilion
Photo credit: TTA

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Concrete column detail
Photo credit: TTA

建物は現場打ちコンクリートによって形づくられ、四隅のマッシブなボリュームが広がりのある開放的な空間を生み出している。この構成により、周囲のブドウ畑との視覚的なつながりが強調され、空間全体に透明感がもたらされている。深い庇はプールデッキやテイスティングテラスに十分な日陰をつくり、屋内外の境界をあいまいにする心地よい中間領域を生み出している。

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Deck overlooking vineyards and Sonoma valley beyond
Photo credit: TTA

内部には小規模なキッチンバーがあり、親密なテイスティングを楽しむことができる。屋根には側面の階段からアクセスできる展望デッキが組み込まれており、谷の景色を見渡すことができる。下層階にはバスルーム、屋外シャワー、温度管理されたワインストレージが備わっている。

この建築は控えめながらも表現力豊かで、風景を支配するのではなく、静かに寄り添うように存在する。単なる付属施設ではなく、日常と自然のあいだ、そして「焼失」と「再生」のあいだをつなぐ体験的な境界として機能している。

本プロジェクトはDNAパリデザインアワードBLTビルトデザインアワードなど複数の国際的デザイン賞を受賞した。Archello Awards 2025「Pavilion of the Year」部門のロングリストにも選出されている。

緻密な素材選定と誠実な設計によって、このパビリオンは悲劇を静かな美と回復の物語へと昇華させた。建築がいかにして人と土地の調和を取り戻し、再び「住む」という行為を再定義できるのか──その力を静かに語りかけている。

テリー&テリー・アーキテクチャー

革新的な建築理論と実践を融合させることに重点を置いている。これまで、プライベートなオルタナティブ住宅から都市デザインまで、他分野のデザイン専門家との協働を通じて幅広い設計概念を探求してきた。より良い建築環境の実現を目指し、建築と都市計画を統合した未来のインフラ構想に関する複数のリサーチにも取り組んでいる。