自然との共生と都市的暮らしの融合を目指す
ブラジル・ポルトアレグレにある静かな一戸建て住宅街に、建築事務所OSPA Arquitetura e Urbanismoが設計した集合住宅「Cap. 1 Três Figueiras」が完成した。本プロジェクトは、“浮遊する住居”というコンセプトを掲げ、都市における新たな集合住宅のあり方を提示している。
敷地は緩やかな傾斜地で、Três Figueiras(トレス・フィゲイラス=三本のイチジクの木)という地名の由来となった一本のイチジクの木が残されている。すべての住戸はこの樹木と東西の自然光を意識して正面を向くように配置され、周囲の風景との調和が図られている。建物は4つの敷地をもとに、4つのブロックに分かれており、それぞれのブロックには4つの住戸が階段状に配置されている。この“ずらし”は単なる造形ではなく、敷地の地形を活かしながら各階を後退させることで、道路との距離を確保し、ボリュームを分散させている。各住戸にはテラスとプールが設けられ、街と自然のつながりが生まれている。
テラスの存在は本プロジェクトの中核をなす。地元の建築規定により、これらのスペースは延床面積に算入されず、販売可能な専有面積の拡張にも寄与している。各住戸には“U”字型のコンクリートトレイとヒジャウ石で覆われたプールが設置され、プライバシーを確保しつつ浮遊感を演出している。内部の空間構成もテラスに向かって開かれ、屋外と屋内の境界を曖昧にすることで、住民の望む暮らしを実現している。

歩行者中心の都市計画と視覚的な開放性を重視し、共用部は1階のファサードに集約。いわゆるパーティールームではなく、普段はラウンジとして機能し、必要に応じて遮音パーティションで区切ることでプライベートな使用も可能にしている。そのほか、ジム、スパ、ドライ・ウェットサウナ、マッサージルームなどが備わり、ギャラリースペースには国際的にキュレーションされたアート作品が並ぶ。ランドスケープは敷地全体にわたり丁寧に設計されている。全長50メートル超のファサードには段状の庭が設けられ、公共歩道と住戸の空間が自然につながるように工夫されている。各テラスには植栽ボックスが設置され、住民による木の植樹も奨励されている。裏手には縦型の庭があり、すべての住戸から見えるよう設計されているほか、2階の住戸には住民の好みに応じた個別の裏庭がある。
「Cap. 1 Três Figueiras」は、その立地する住宅街の魅力を最大限に引き出しながら、都市と自然の両方を享受する新たなライフスタイルを提案する集合住宅である。
OSPA Arquitetura e Urbanismo
OSPAは、オブジェクトスケールから都市設計に至るまで、建築を都市生活を変革するためのツールと捉え、空間体験を生み出している建築スタジオ。不動産と金融市場の動向に対する深い理解に基づき、持続可能かつ市場性のあるプロダクトを創出し、都市との密接なつながりを保っている。技術、建築、都市経済を融合させた包括的かつ学際的なアプローチによって、細部までこだわり抜いた高性能な建築を提供。空間の設計を超え、持続可能で質の高い都市環境の実現に貢献することを使命としている。

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