建築と風景の境界を溶かす、森に抱かれた住宅
ESTUDIO Ignacio Urquiza Ana Paula de Albaがメキシコ・アバンダロの深い森林地帯に建つ個人住宅「ハウス・イン・アバンダロ」を完成させた。急峻な地形と既存の樹木、そして敷地内を流れる雨水の動線が、建築計画に大きな影響を与えた。敷地は自然に雨水を隣接する小川へと導く傾斜地にあり、建築はその地形に抗うのではなく、寄り添うように配置されている。
主ファサードは北側に向けられ、小川に向かって開くことで、安定した自然光を室内へと取り込む。全体の空間構成は地形の起伏や敷地に残された松やオークの大木の配置に応答しており、複数のボリュームが噛み合うことで生まれた中央のヴォイドは、中庭として機能する。ここでは既存樹木を保存しつつ、南側からの陽光を室内に導き、自然な温熱環境をつくり出している。
建築は大きく二つの空間的性格によって構成されている。ひとつは閉じられた「固体」のボリューム、もうひとつはそれら三つを横断的に結ぶ軽やかな屋根構造である。この屋根の下に設けられたのが、住まいの中心となる共有空間だ。全面をガラスで囲まれたリビングエリアは、周囲の森を積極的に取り込み、鉄骨梁に支えられた軽量コンクリートスラブの屋根によって、開放性と構造的明快さを両立している。
固体ボリュームは住宅の主要構造体であり、プライベート空間やサービス機能を収めている。窓は慎重に配置され、視線と光をコントロールする。計四つのボリュームがあり、一つ目には左右対称の寝室二室、二つ目には多目的に使えるファミリー/テレビルーム、三つ目には縦方向に機能を積層した構成が採られ、キッチン、書斎、主寝室が階ごとに配置されている。四つ目は独立したボリュームとして、機械室、貯水槽、サービスエリア、駐車スペースを担う。
これらのボリュームと住宅の象徴的存在である暖炉が屋根を支え、リビングやダイニングといった公共性の高い空間と、家族用のセカンドリビングを含む半公共空間を明確に分節している。これらの共有ゾーンは四方が透明で、庭と直接つながる構成となっている。
リビング・ダイニングには、幅9.6メートルに及ぶ床から天井までの大開口が設けられている。4枚の引き戸は全開放が可能で、室内空間は屋根付きの屋外テラスへと変化し、内と外の境界を曖昧にする。
建物全体は露出コンクリートの基壇の上に載り、この基壇は基礎であると同時に、地面からの湿気を抑える熱的バリアとして機能する。壁は煉瓦積みとし、地元産のスタッコで滑らかに仕上げられている。固体ボリュームに架かる切妻屋根はフラットな粘土瓦で覆われ、雨水の回収を可能にする。一方、フラットな大屋根は寝室から直接アクセスできるテラスとしても機能し、樹冠に近い視点から森を眺める新たな体験をもたらす。
素材構成は抑制されたニュートラルなトーンで統一され、周囲の緑が主役となる背景を形成する。内装には軽やかな素材と控えめな家具が選ばれ、オーク材、大理石、火山石に加え、ウールやリネン、地元のヤシ編みなどの自然素材が、空間に温かみと触覚的な豊かさを与えている。照明は控えめに設えられ、静かで連続性のある雰囲気を支えている。
「ハウス・イン・アバンダロ」は、建築の形態、居住空間、そして周囲の自然環境との関係性を丹念に編み上げることで、建築と風景が一体となった没入的な住空間を実現している。

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