ABPCアーキテクツによる、木を多用したシンプルなデザインで景観に溶け込むスポーツ施設が完成

ケベック州ボワスカテルのゴルフコース横の森林地帯を公園へと生まれ変わらせる再開発プロジェクトの一環として、2020年1月、パーク・サフィルに屋外スケート場が完成した。スケートだけでなく、様々なスポーツが楽しめるこの施設は、以前ハイドロ・ケベックが所有していた土地に建設された。メインの施設はこのスケートリンクと事務所だが、将来的には、ロープコース（柔軟性、バランス力、体力を駆使して専門トレーナーのもとでグループでプログラムを行う、屋外の体験教育用施設）をはじめとしたフィットネス設備や、筋力トレーニング設備、スケートトラック、バレーボールコート、BMXコースなどを建設する予定。

Photo credit: Stéphane Groleau

プロジェクトの主な目的は、夏冬兼用の屋根付き屋外設備を作ることだった。当施設は、冬はスケートリンク、夏はフィールドホッケー場やバスケットボールコートとして活用できる。サフィール公園の端の森の中に位置するが、リンクの一方が道路に面していることでアクセスしやすく、48台の広い駐車スペースと彩り鮮やかな植物が来場者を出迎える。リンクの逆側には、事務棟を設置することで、冬の冷たい風のリンクへの吹き込みを最小限に抑えている。そして、当プロジェクトを象徴するのが、木とスチールを組み合わせた構造の大きな屋根である。

Photo credit: Stéphane Groleau

できるだけ木を利用しながらも軽いイメージの構造を目指し、ABCPアーキテクチャーのデザイナーたちは、あらゆるバリエーションを査定し、改良を重ね、この環境に最適なデザインを導き出した。建築コンセプトの核となるのが、木とスチールのハイブリッドフレーム。接着合板とスチール梁の構造は、薄いながらも28メートルのクリアスパンを実現している。雨水は屋根の両サイドに排水されるシステムで、雨水対策にも配慮している。風避けになる大きな木の屋根は、リンク両脇のＶ字型のスチールの支柱で支えられており、最小限の要素で構築された、シンプルな構造となっている。

Photo credit: Stéphane Groleau

Photo credit: Stéphane Groleau

建物の北西部分には、入口にもなっている事務棟がある。独立したこの棟には、更衣室と多目的室、メンテナンス/備品管理室、そして備品レンタルカウンターがある。事務棟は軽い木のフレームとひさしで覆われたこぎれいなデザインで、メインの大屋根のイメージと連動している。

Photo credit: Stéphane Groleau

このプロジェクトの最も革新的な点は、木材を戦略的に利用したことである。事務棟で利用された軽木材のフレームは、予算を抑えるのに有効だった。スケートリンクを覆う屋根は、接着合板とスチールを組み合わせることでそのスパンを広げることに成功。予算も抑えることができただけでなく、視覚的にも明るいイメージに仕上がった。

Photo credit: Stéphane Groleau

独特な形状の屋根は、木の大きさによってそれぞれのポイントで最適な大きさにトラスを調節。類似した2つの木を繋ぎ合わせたトラスは、トラス、つなぎ梁、支柱の接合部分を巧妙に隠し、すっきりと見せる役割も果たしている。また、支柱をＶ字にして荷重を分散したことで、絶妙なバランスで屋根が支えられている。

Photo credit: Stéphane Groleau

受賞実績

• ケベック建築家協会（Ordre des architects du Québec)　優秀賞
• ウッドデザイン＆ビルディング アワード　栄誉賞
• セコボア優秀賞（アウトドア建築部門）

ABCPアーキテクチャーについて

ABCPアーキテクチャーは、1987年設立の建築デザイン事務所。環境に負荷がかからず、景観に溶け込むシンプルなデザインで知られている。都市計画や建築、インテリアデザインを融合させた、オリジナリティに溢れた基礎的なプロジェクトを手掛けてきた、持続可能な開発のパイオニアである。ノウハウを共有して相互に補強しあう70のチームにより、カナダ全土のみならず国外でも多くのプロジェクトを手掛けている。