「海ごみのあと」展は海ごみという問いにどのように向き合うかを表現
アートプロジェクトプロデュース集団「WATOWA GALLERY」は、 アーティスト藤元明のソロエキシビジョン「海ごみのあと」をプロデュースし、渋谷のオルタナティブスペースelephant STUDIOで2021年5月5日(水)から5月16日(日)まで開催する。
藤元明は、これまで《TOKYO 2021》や《FUTURE MEMORY》、都市の余白を利用するプロジェクト《ソノ アイダ》など、企業や、他のアーティスト等とも協力し、社会への接続を試みるアート・プロジェクトを展開してきた。「海ごみのあと」展では、海ごみという問いにどのように向き合うかを表現。これまで《NEW RECYCLE》をテーマに日常の無駄・余剰をアートで昇華してきた藤元が、自ら海岸や海上に足を運んで採取した映像と、実際の海ごみやその再生素材を用いた作品を展示する。
アートだけではなくファッション、建築、アクティヴィズムなど幅広く活動する藤元のアティチュードは、1970年代にニューヨークを中心にアート、建築、ストリートカルチャー、食と越境的に活動したアーティスト、ゴードン・マッタ=クラークにもなぞらえられる。本展にも出展する《Last hope(海ごみのお好み焼き)シリーズ》は、マッタ=クラークが、ガラス工場で採集したごみを溶かして固めた《ごみのレンガ》の、現代的なアップデートとして、文明のすべてのごみが流れ着く最下流としての海から、改めて警鐘を鳴らすものかもしれない。また藤元は、2020年10月にJAMSTECの海洋調査船に乗船、海ごみ調査の現場から様々なインスピレーションを得た。微細なプラスチックごみが流入していると言われる海面の映像を湧き出る泉のように表現した《Fountain#Neustonplastics》では、目には確認できないマイクロプラスチックの存在を想起させる。泉と海は、地表に存在する水の中で最も遠いものであるが、どちらも人を魅了し続けてきた地球の豊かさの象徴。無数の見えないごみを含みながらも、鑑賞者を魅了する美しい海の映像は、人間が全貌を把握しきれなくなったごみの問題を皮肉に照らすものといえる。藤元は、「安くて便利」を求める我々の欲望と地続きにある解決できない環境問題と、SDGsやサステナビリティすらも形骸化してしまう現状を「悪者のいない絶望」と呼び、その先の価値観を探ってきた。
本展「海ごみのあと」では、海ごみの「痕跡としてのあと」と「事後としてのあと」をコンセプトに、それらの絶望に対し沢山の協力者と共に向き合う。ポップかつ明快な藤元の表現は、様々なレイヤーで我々の意識を開き、「関心」という小さいけれども重要な前進になる。また、藤元明は漁網を価値のあるものとして生まれ変わらせるプロジェクトとして、アイウエアブランドのJINS、廃漁網のリサイクルに取り組むリファインバースと協業し、宮城県の漁網を100%活用して作られた添加剤不使用のサングラスを作成し、本展でプロトタイプを展示する。
藤元明 プロフィール
1975年東京生まれ。東京藝術大学美術学部大学院デザイン専攻修了。FABRICA(イタリア)に在籍後、東京藝術大学先端芸術表現科助手を経てアーティストとして国内外で活動。社会現象や環境問題をモチーフとして、様々なメディアで作品展示やアートプロジェクトを展開。主な活動に「NEW RECYCLE®」「2021」、原爆や戦争など社会的喪失の記憶をテーマにした国際的プロジェクト「FUTURE MEMORY」など。主な展覧会に「ソノ アイダ#COVID-19」「TOKYO 2021」「陸のうみごみ」など。2015年より開始した都市の余白を活用する「ソノ アイダ」プロジェクトは現在も様々な形で進化している。
藤元明個展「海ごみのあと/ Trace of Marine Debris」
会期 | 2021年5月5日(水) - 2021年5月16日(日) 12:00 -19:00 |
会場 | elephant STUDIO 1F/ 2F |
住所 | 東京都渋谷区渋谷2-7-4 |
入場料 | ¥500から⾃⾝で⾦額を決定するドネーションシステム *500円をミニマムに入場料を自身で決定し、それが若手アーティスト支援のためのドネーションとなるシステム。2021年12月に開催される未来を担う若手アーティストに発表の場を提供し、サポートすることを目的としたアートコンペティションに寄付。 |
備考 | 2021/05/09 エントランス無料 |