「ワールド・ビルディング・オブ・ザ・イヤー」はフェルナンド・メニス設計プロジェクトが受賞

最終日を迎えた2025年世界建築祭（WAF）において、43部門すべてで選出された受賞者のなかから「ワールドビルディング・オブ・ザ・イヤー」、 「ワールドインテリア・オブ・ザ・イヤー」、 「フューチャープロジェクト・オブ・ザ・イヤー」、 「ランドスケープ・オブ・ザ・イヤー」の最優秀賞および「アメリカン・ビューティー・プライズ」などの特別賞が発表された。

受賞者

ワールドビルディング・オブ・ザ・イヤー

• 「ラス・チュンベラスの聖救世主教会およびコミュニティセンター」
  （スペイン・ラ・ラグーナ、フェルナンド・メニス設計）

World Building of the Year
HERO_The Holy Redeemer Church and Community Centre of Las Chumberas by Fernando Menis
Photo credit: © Roland Halbeerk und Beleg / Copyrightpermission required for reproduction, Photocredit: Roland Halbe]

都市周縁の衰退地区に再生の契機をもたらすランドマークとして建設された教会と地域センター。寄付金の流れに応じた段階的施工によって、4つの独立ボリュームが時間をかけて完成した。火山地形を想起させる力強い形態と、隙間から差し込む繊細な光がミニマルかつ精神的な空間体験をつくり出す。チップドコンクリートなど革新的素材使いにより、オペラハウス並みの音響性能も実現。地域社会の象徴性と日常性を両立させた建築として高く評価された。

World Building of the Year
The Holy Redeemer Church and Community Centre of Las Chumberas by Fernando Menis
Photo credit: © Simona Rota

World Building of the Year
The Holy Redeemer Church and Community Centre of Las Chumberas by Fernando Menis
Photo credit: © Hisao Suzuki

ワールドインテリア・オブ・ザ・イヤー

• 「フラクタル・チャペル」
  （オーストリア・グラーツ、INNOCAD architecture設計）

World Interior of the Year
FRACTAL CHAPEL at State Hospital Graz by INNOCAD architecture
Photo credit: © Paul Ott

州病院内に設けられた小さな礼拝堂で、患者・職員・来訪者に静寂と心の回復を提供する場としてデザインされた。神経科学・環境心理学研究に基づき、自然界の幾何学を応用したフラクタルパターンとバイオフィリック要素を導入。独自プログラムで生成されたフラクタルが視覚的安定感と心理的リラクゼーションを生む。木材を基調にした簡潔な素材構成、8mの吹き抜け、根株を使った一点物の祭壇などにより、深い内省を促す空間が構築されている。

フューチャープロジェクト・オブ・ザ・イヤー

• 「ゲレフ国際空港」
  （ブータン・ゲレフ、Bjarke Ingels Group設計）

Future Project of the Year
Gelephu International Airport by BIG - Bjarke Ingels Group
Photo credit: © BIG

2029年の開業を予定するブータン第二の国際空港。伝統工芸と現代技術を融合し、自然光や木構造のダイアグリッドを取り入れた「マインドフル」な旅の体験を提供するよう設計されている。地元産木材の活用や換気屋根・中庭による環境性能の向上、上階に配置したゲートや商業エリアからのヒマラヤの眺望などが特徴。ヨガや瞑想のためのスペースも備え、国の幸福理念を体現。さらにブータン初の内陸モビリティハブとして地域交通の結節点となる計画である。

Future Project of the Year
Gelephu International Airport by BIG - Bjarke Ingels Group
Photo credit: © BIG

Future Project of the Year
Gelephu International Airport by BIG - Bjarke Ingels Group
Photo credit: © BIG

ランドスケープ・オブ・ザ・イヤー

• 「洪水を抱く：新江河川エコロジカル回廊」
  （中国・江西省上饒市、Turenscape設計）

Landscape of the Year
Embracing Flood – Xinjiang River Ecological Corridor by Turenscape
Photo credit: © Turenscape

102ヘクタールの氾濫原を再生し、生態系保全と市民利用を両立させた河川回廊プロジェクト。スポンジシティの概念を導入し、洪水を排除するのではなく受け入れることで、生物多様性を回復し都市のレジリエンスを高めている。低コスト・低メンテナンスで運用でき、地域のランドマークとして機能。洪水の脅威に備える都市に向けた普遍的でスケーラブルなモデルとして評価された。

特別賞受賞者含むすべての受賞者に関する詳細は公式サイトより一覧できる。

世界建築祭（WAF）

WAFは世界の建築コミュニティが集い、祝福し、学び、交流し、インスピレーションを得る場として毎年開催される世界最大規模のライブ審査型建築アワードプログラム。建築家自身によるプレゼンテーションを通じ、著名な来場者や国際審査員団がデザインの成果を評価し顕彰している。