模型都市東京

寺田倉庫が運営する建築倉庫ミュージアムは、展示室Bにて高山明 / Port Bによる「模型都市東京」展を2020年2月8日(土)から5月31日(日)まで開催する。本展は、演出家、アーティストである高山明(Port B)の企画によって、どこでも再現可能な形態でつくられた都市のインフラ・構成要素を「模型」として捉え、現在の東京のリアルな姿を浮かび上がらせることが狙い。高山明の演劇的手法によって、展示空間は生成変化する場となり、東京という都市に接続されていく。また、本展は一度チケットを購入すれば、会期中であれば何度でも再入場が可能となっている。

adf-web-magazine-port

「模型都市東京」ノート

 「模型」がなにかを模したものなら、「身振りの模倣」からはじまった演劇は模型と相性がいいはずだ。演劇の場合は、模倣がある型を獲得することで、つまり「模型」になることで、呪術から独立し、芸能になったと言われている。具体的には、田の豊穣を祈る「田遊び」が真似され、身振りが固定されることで「田楽」になった。これは、田の上でしか成立しないサイトスペシフィックな行事が、田を離れてどこにでも移動でき、再演可能な芸能になったことを意味する。別の言い方をすれば、演劇はそもそも模型であり、だからこそあらゆる場所で上演/再演することができるのである。
 上演/再演の場所は「舞台」と呼ばれてきたが、神社や劇場にある舞台の上には今や劣化した模型があるばかりで、活きのいい模型を探すなら街のなかに出て行った方がよい。そうした目で東京を眺めてみると、この街にはその場でしか成立しないオリジナルなものは少なく、模型に溢れていることに気づく。どこにでもある模型が世界のどの都市よりも偏在し、それが様々な人に利用され、それぞれのやり方で独自に上演/再演される。その偏在性と上演/再演可能性の豊かさが、この都市の特徴とすら言えそうだ。それらの模型を面白く使いこなす人たちが現れ、都市のアクティビティを生み出し、ライフスタイルを更新していく。それが逆説的に、東京という「模型都市」のオリジナリティになっている。
 建築倉庫ミュージアムという建築模型を展示する場所で、東京の逆説をポジティブに展開させることができればと考えている。

高山 明

Port Bについて

2002年東京で結成。Port Bは、高山明を中心にプロジェクトごとに形を変えて作られる創作ユニット。実際の都市を使ったインスタレーション、ツアー・パフォーマンス、社会実験的プロジェクト、言論イベント、観光ツアーなど、多岐にわたる活動を展開している。いずれの活動においても「演劇とは何か」という問いが根底にあり、演劇の可能性を拡張し、社会に接続する方法を追求している。 

高山明について

1969年生まれ。演出家・アーティスト。東京藝術大学大学院映像研究科教授。2002年に創作ユニットPort Bを結成。現実の都市や社会に介入する活動を世界各地で展開している。2013年にはPort都市リサーチセンターを設立し、演劇的発想を観光や都市プランニング、社会実践やメディア開発などにも応用する取り組みを行っている。

模型都市東京 情報

展覧会名模型都市東京
会期2020年2月8日(土)〜 5月31日(日)
会場建築倉庫ミュージアム 展示室B
開館時間火〜日 11 時〜19 時(最終入館 18 時)
月曜休館(祝日の場合、翌火曜休館)
入場料一般 3,100 円、大学生/専門学校生 2,000 円、高校生以下 1,000 円
主催建築倉庫ミュージアム