身近な「物」から浮かび上がる記憶と存在 祖父の死をきっかけに制作された6本の映像を公開

シュウゴアーツは映像作家・山本篤によるオンラインスクリーニング企画「映像小屋 3 ― 残光」を2025年7月26日から8月30日まで開催する。本企画は2023年から始まった「映像小屋」シリーズの第3弾にあたり、全6本の新作が発表される。山本篤は多摩美術大学で絵画を学んだのち、2003年にベルリンへ渡航したことを契機に映像制作へと活動の軸を移した。何をどう作るかではなく、「何がなされているか」という視点から、日常の中のあらゆる事物を素材として、「自分が本当に見てみたい世界」を映像化することを模索し続けている。

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山本篤, 魂の流れ, 2025

2023年の「映像小屋」第1弾では「小屋」というテーマのもと、仮設的な空間やザンビアの映画館、灯台、プールなど、さまざまな「場」をめぐる作品を発表。翌2024年の第2弾では「時」に焦点を当て、四季の変化や宇宙的時間、線香の燃焼、涙が流れる瞬間といった、多様な「時間」のかたちを描いた。

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山本篤, 留めることはできず、失い続けていく, 2025

シリーズ3年目となる今回は、2024年12月に他界した祖父の家や遺品を起点に制作された新作群を紹介する。東京郊外の住宅街に建てられた堅牢な家と庭、テニスコートには、高度経済成長期の面影とともに、改築の痕跡や日用品、調度品、土産物、書物が詰まっていた。「寡黙だった祖父本人よりも、残されたノートや写真といった“物”を通しての方が、より具体的に祖父の人となりを感じられた」と語る山本は、失われた存在と、そこに宿る記憶を手がかりに、「人の実体とは何か」「魂はどこに宿るのか」「定まらない『自分』という存在を、この世界に留めるものは何か」といった根源的な問いに向き合っている。

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山本篤, 私たちの練習, 2025

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山本篤, 3 カウント, 2025

制作を通して、作家自身もまた「過去に作った作品により構成されている」ことを再認識する一方で、それらの作品が家族や社会にとってどのような意味を持ちうるかは明らかではないという。「ただ、自分にとっては、それが意味や価値といった一般的な尺度で測れるものではなく、その固定化された形こそが自分自身のかたちであり、自分の人生のかたちだと考えています」と語る山本は、「残されたモノ(物)を通して、残されたモノ(者)としての自分が、残すモノ(者)と、残すモノ(物)について考えているのかもしれない」と続ける。儚くも連なる日々を照らす「残光」のような映像作品を通じて、記憶と存在の在処を静かに問いかけるオンライン企画となっている。

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山本篤, テニスコート・ステージ・ドラム, 2025

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山本篤, 世界, 2025

山本篤 プロフィール

1980年東京都生まれ。多摩美術大学絵画学科卒業。2003年にベルリンへ渡航し、映像制作を開始。2018年には文化庁新進芸術家海外研修制度でベトナム・フエに滞在。平日は会社員として働きながら、休日に撮影を続けるスタイルで、これまでに300本以上の映像作品を制作している。フィクション、ドキュメンタリー、コント的な実験映像など、多様な形式を通して「生きることの意味と無意味さ」を問う作品を発表している。主な展覧会に、「寄る辺ない情念」黄金町バザール2024(2024)、「昨日の神殿」Art Center Ongoing(2024)、「MY HOME IS NOT YOUR HOME」シュウゴアーツ(2022)、「DOMANI・明日展」国立新美術館(2021)、「MAMスクリーン07」森美術館(2017–18)、「ビデオアートプログラム 世界に開かれた映像という窓 第24回:山本篤」広島市現代美術館などがある。

山本篤「映像小屋 3 ー 残光」

期間2025年7月26日(土)から8月30日(土)まで
視聴シュウゴアーツ公式ウェブサイトで公開
URL https://shugoarts.com/