モントリオールの都会的な愉しみ

世界の多くの都市でアーバンデザインが新たなマントラとなっているが、ユネスコのデザイン都市に選ばれたモントリオールは車の通行よりも歩行者の活動を優先させるという点で、そのトレンドのリーダー的存在になりつつある。歩道の幅を広げ、交差点を小さな憩いの場やミニガーデンに変えるなど、あらゆる機会をとらえて街並みを変えている。

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Photo credit: Maud Thery

その中でもモニーク・メルキュール広場はこの新しい都市のトレンドの一例である。このプロジェクトを担当したシヴィリティ社は過去20年にわたり、モントリオールの街並みに大きな影響を与えた数々の都市デザイン、ランドスケープ・アーキテクチャーのプロジェクトで知られている。

プログラム

このプロジェクトは小さな都市にオアシスが求められているというところから始まった。敷地は活気あふれるアウトルモン地区にある歴史的なアールデコ劇場のすぐ外側にある歩道の拡張部分。道路沿いの駐車場を数台分撤去することで、近隣住民が会話を楽しみ、ストリートライフを楽しめる場所を提供することができた。ベンチの周囲にはフリースペースがあり即席の観劇イベントにも対応できる。

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Photo credit: civiliti

インスピレーション

ケベック州で最も有名な女優の一人、モニーク・メルキュール(1930-2020)にちなんで名付けられたこの広場のデザインコンセプトは、隣接する1929年のアウトルモン劇場の特徴であるアールデコ様式に触発されたもの。その特徴は3つのライトボックスに最もよく現れている。オブジェの側面と上部に再現された花柄は、1929年の劇場建設時に建築家ルネ・シャルボノーとアーティストのエマニュエル・ビファが共同制作したもの再解釈してデザインされている。

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Photo credit: Maud Thery

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Photo credit: Maud Thery

レイアウト

近隣住民、劇場利用者、通行人にとって使い勝手の良いアウトドアリビングが提供できるように、花崗岩の長いリボンが敷地を取り囲み、家族連れやカップル、あるいは一人で楽しむ人などさまざまな席の配置が可能なレイアウトになっている。3つのライトボックスがランタンとして機能し、パブリックスペースにアクセントを与え、夜には暖かい光を放っている。

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Photo credit: Maud Thery

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Photo credit: Maud Thery

素材

モニーク・メルキュール広場の素材は、アール・デコの劇場からヒントを得ている。ケベックの山から切り出された茶色の花崗岩は、この場所の長いベンチに使われ、席には劇場の扉と同じ色のダグラスファーが選ばれた。

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Photo credit: Maud Thery

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Photo credit: Maud Thery

ナショナル・アーバン・デザイン・アワード

モニーク・メルキュール広場は2022年度ナショナル・アーバン・デザイン・アワードのメンション(Urban Fragments部門)を受賞。カナダ王立建築協会(RAIC)、カナダ計画家協会(CIP)、カナダ造園家協会(CSLA)が共同で主催するこのアワードは2年に1度行われるカナダで最も権威のあるアワードの一つとなっている。

シヴィリティ社について

ピーター・ソランとファニー・デュゲイ・ルフェーブルによって設立されたシヴィリティ社は、モントリオールを拠点とする都市設計・景観建築事務所で、コンテンポラリー・インターベンションを行うことで知られている。最も注目すべきプロジェクトは象徴的なマウント・ロイヤルの遺産にある「Escales découvertes (Discovery Halts)」で、同社はジュリー・マルゴー設計と共同で数々のアワードを受賞している。