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従来のジャーナリズムの枠を超え、写真の芸術的可能性を探る

「W. ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代」が東京都写真美術館で2026年3月17日(火)から6月7日(日)まで開催される。第二次世界大戦中、グラフ雑誌『ライフ』の特派員としての活躍で知られるスミスは、戦後も同誌を中心に人々の生活に密着した作品を発表、複数の写真と短い解説文を組み合わせて物語を紡ぐ「フォト・エッセイ」の第一人者として確固たる地位を築いた。『ライフ』誌から退いたのち、ニューヨーク・マンハッタンのアパート、通称「ロフト」に移り住み、セロニアス・モンクやマイルス・デイヴィスをはじめとするジャズ・ミュージシャン、サルバドール・ダリや抽象表現主義の画家たち、ロバート・フランクやダイアン・アーバスなどの写真家まで、ロフトに集まる時代を担う多彩な芸術家との交流の様子を写真に収めている。

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W. ユージン・スミス〈AS FROM MY WINDOW〉より 1958年頃 ©1958, 2025 The Heirs of W. Eugene Smith

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W. ユージン・スミス〈AS FROM MY WINDOW〉より 1958年頃 ©1958, 2025 The Heirs of W. Eugene Smith

本展ではこの「ロフトの時代」とその前後の作品を中心に紹介し、報道写真家としてだけでなく芸術家としてのスミスの姿に光をあて、晩年の代表作〈水俣〉に至るまでその作品を新たな視点から再考。従来のジャーナリズムの枠を超え、写真の芸術的可能性を探る試みに満ちたスミス作品の新たな魅力が紹介される。

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W. ユージン・スミス〈AS FROM MY WINDOW〉より 1958年頃 ©1958, 2025 The Heirs of W. Eugene Smith

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W. ユージン・スミス《セルフ・ポートレイト》 1957年頃 ©1957, 2025 The Heirs of W. Eugene Smith 画像提供: Center for Creative Photography, The University of Arizona: W. Eugene Smith Archive

展覧会のみどころ

ロフトの時代に焦点を当てた日本初の展覧会

1954年に『ライフ』を離れたスミスは報道写真から距離を置き、巨大都市に向き合った〈ピッツバーグ〉(1955–56年)を撮影した後、1957年からロフトへ移住。ジャズ・ミュージシャンや画家、写真家が集ったロフトは、スミスが実験的な撮影や新たな表現を追求した拠点だった。本展では、これまで断片的に扱われてきたロフト期前後の作品群を体系的に提示し、スミスがジャーナリズムの枠を超えて自身の写真表現をいかに拡張したのか、その全体像に迫る。

ロフトで育まれた表現の転換 ― 「記録」から「表現」へ

ロフトでの生活と制作で、写真観を大きく変えたスミス。窓から見下ろすマンハッタンの街並みや、芸術家たちの交流など、日常の断片を観察し続けた経験は、スミスの視点を報道的な出来事の「記録」から、時間を超えて本質を浮かび上がらせる芸術的な「表現」へと押し広げた。本展では、アリゾナ大学クリエイティブ写真センター(Center for Creative Photography)に収蔵されているW. ユージン・スミスアーカイヴの資料を元に、当時スミスが書き残した言葉やスケッチ、新聞の切り抜きが貼りめぐらされていたロフトの壁を、ロフトで流れていた音楽とともに展示室に再現し、スミスの思考の軌跡をたどる。

ロフトから広がる視線 ― ジャズ、ニューヨーク、スミスが見つめる日常

かつては自ら取材先へ赴いて撮影していたスミスは、ロフトでは窓の外に広がる光景を受動的に見つめ、日々を写し取った。「第2章 ロフトの時代」では、マンハッタンの街並みを定点的に記録した〈私の窓から時々見ると…(As from My Window)〉や、生活空間を撮影した〈ロフトから(From the Loft)〉など48点で構成。〈ジャズとフォークのミュージシャンたち(Jazz and Folk Musicians)〉では、セロニアス・モンクなど、ロフトで繰り広げられるジャズ・ミュージシャンたちのセッションを、ブレやボケ、強いコントラストといった実験的手法で捉え、音の躍動や緊張感を視覚的に表現している。本章では、ロフトで撮影された当時のスミスとアーティストたちの映像も紹介する。

スミス自身が構成した展覧会「Let Truth Be The Prejudice」

10年以上におよぶロフトでの制作を経て、スミスはジャーナリズムへと回帰。自ら企画・構成した回顧展「Let Truth Be The Prejudice」(1971年、ジューイッシュ・ミュージアム、ニューヨーク)は、ジャーナリズムの「真実性」への懐疑と、報道に携わる写真家としての責任を提示した重要な試みだった。写真とテキストを併置する構成により、鑑賞者に深い思索を促すものとなり、スミスはフォト・エッセイの理念を自ら再構築。当時展示された約600点のうち約500点を東京都写真美術館が所蔵し、本展ではその一部を再現してスミスの思想の核心に迫る。

〈水俣〉で結実する「報道と芸術の融合」

「Let Truth Be The Prejudice」展を経て、スミスは「報道と芸術表現は本来切り離せない」という自身の写真観をあらためて確信し、〈水俣〉シリーズの制作に取り組んだ。本展の第4章では、社会の現実に深く寄り添う報道性と、ロフトで培われた芸術的感性が交差する代表的シリーズ〈水俣〉を紹介。また、ロフト期晩期からスミスと共に「Let Truth Be The Prejudice」展準備に携わり、スミスと共に水俣を撮影したパートナーであり、本展企画協力者であるアイリーン・美緒子・スミスを迎えた全3回のシンポジウムを開催し、作品と背景に多角的に迫る。

「W. ユージン・スミスとニューヨーク ロフトの時代」開催概要

会期2026年3月17日(火)~6月7日(日)
時間10:00~18:00(木・金は20:00まで)
会場東京都写真美術館 2階展示室
休館日毎週月曜日 ※ただし5月4日(月)は開館、5月7日(木)は休館
料金一般700円、学生560円、高校生・65歳以上350円
URLhttps://www.topmuseum.jp/