国際的に活躍するアーティスト スーザン・フィリップスのサウンド・インスタレーション《Wind Wood》を新たにコレクション
《Wind Wood》は2019年に開催された企画展「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」に際して、ポーラ美術館屋外の「森の遊歩道」で展開されたもの。富士箱根伊豆国立公園の凛とした空気に包まれた鑑賞空間の中で、アーティスト自身が箱根に滞在して制作した幻想的な音色をふたたび楽しめる。スーザン・フィリップス(Susan Philipsz)の作品の収蔵は、国内の美術館ではポーラ美術館が初となる。作品の展示期間は2020年7月23日(木/祝)から11月30日(月)まで。
《Wind Wood》2019年について
スーザン・フィリップスは、室内や屋外に音を響かせることでその空間や環境を新たに体験させるサウンド・インスタレーション作品で特に知られるアーティスト。彼女の作品は美術館やギャラリーなどの室内、あるいは、日常的な騒音が混在するバス停や線路などの野外にも設置され、周囲の環境と鑑賞者を取り込みながら展開される。フィリップスの作り上げる作品は、場所の記憶や歴史を読み解き、空間や建築物との対話を経て、深く豊かな音色として紡がれる。
本作品の制作に先立ってフィリップスは箱根に滞在し、ポーラ美術館を取り囲む自然の美しさ、そしてコレクションの中核をなす印象派の画家たちの作品から着想を得た。完成した作品《Wind Wood》は、小説家ジェイムズ・ジョイスの娘で、1920年代のパリでダンサーとして活動したルチア・ジョイスに捧げられている。フィリップスは、ルチアが好み、また印象派とも称される作曲家モーリス・ラヴェルの歌曲「魔法の笛」を題材とすることで印象派絵画との共鳴を生み出した。フルートの音色が、印象派による「筆触分割*」のように音階ごとに解体され、それぞれの音が別々に設置された11個のスピーカーから響き合う。
スーザン・フィリップス(Susan Philipsz)プロフィール
1965年イギリス、グラスゴー生まれ。ベルリン在住。ダンカン・オブ・ジョーダンストン・カレッジ・オブ・アート&デザイン、およびアルスター大学にて彫刻を学ぶ。以降、楽器や環境音、自身の歌声などを用いて、空間と物語、音に関する作品を制作。土地の記憶や歴史といった複雑なコンテクストを、独自の視点で構築的なサウンド・インスタレーションへと転換した作品は、その空間を息づかせ、鑑賞者の感情や記憶を豊かに喚起する。2010年ターナー賞受賞。世界各国で個展を開催し、日本国内では「PARASOPHIA: 京都国際現代芸術祭2015」「札幌国際芸術祭2014」などに参加。各国の主要美術館等にパブリック・コレクション多数。