ー 私も参加させていただきましたが、近年盛んな地域の芸術祭が良くも悪くも観光客獲得を目的とした地域振興や資本主義的な風潮に流されているものが多い中で、鹿野芸術祭は小さな文化祭のように町の人たちがなごやかに作品を見て歩いているのが印象的でした。
数字に表れる経済効果や客数の結果だけが目的の芸術祭は表面的な利害関係のみで成果を問われ、集客が思うようにいかなかった場合、破綻を余儀なくされますが、鹿野芸術祭のように町の規模に合わせた文化的な需要と供給(町の人が見て楽しんだり考えたりできる範囲とアーティストが作品を展示できる範囲)のバランスが取れていて、町の人が自主的に参加して運営を手伝ってくれるような芸術祭の方が地域に根付いて残っていくのではないかと感じました。
藤田: ありがとうございます。私たちもこの活動を続けていく上で大事にしている方針として、アーティストが純粋な作品づくりを楽しめることを一番に考えていて、入場者数を増やすことを目的としないことにしています。なので参加してくれた作家さんからのそういった言葉が何より嬉しいです。
それともうひとつ、作家とお客さんが同じ目線で柿を食べながら話ができるのもこの芸術祭の特徴かなと思っています。鹿野町の人たちは自分たちの土地ではお客さんに対しても容赦なくつっこんでくるため、アーティストにもそれが刺激になればと思っています。容赦なく作品に柿置いてくおっちゃんとかね(笑)。
ー 鹿野町は鳥の劇場があったり、古くから続く祭りや虚無僧行列があったりなど、文化行事を楽しむ習慣が根付いているのも大きいのかもしれませんね。今年東京で個展をされるそうですが、そちらはどういった内容でしょうか。
藤田: 7月15〜26日にかけて、吉祥寺にあるArt Center Ongoing で個展をします。
この展示では10mの絵巻を展示する予定ですが、これは心の中に広がる森を鹿野の風景をモチーフに描いたもので、昨年鳥取で発表しました。それからさらに加筆して、絵の裏面に広がる海と夜空を先月滞在制作をしたノルウェーで描きました。個展では表裏合わせて20mの絵を歩きながら鑑賞出来る形になっています。 来てくれた方が自分の心の中を静かに歩くような時間が作れたらと思っています。また、それに合わせて描いた新作の小作品も展示する予定です。
ー 最後に、海外での活動を考えている学生やアーティストにアドバイスなどがありましたらお願いします。
藤田: 海外で活動する機会があれば、自分がなぜそこで活動したいのか、学生ならそこで何を学びたいのかをひとつ明確にしておくと、迷いがあったときの道しるべになるかと思います。
海外で活動、勉強するということは、制作だけでなく、生活全般が変わることになります。1から覚えることが沢山あり、刺激的な分、スムーズにいかない戸惑いや苛立ちとも向き合うことになります。時には日本にはなかった沢山の考えに出会い、混乱し立ち止まることもあるかもしれません。そんな時、自分の目的が定まっていれば、些細なことがあっても道を大きく外れることなく、 突然のハプニングが起きてもまたすぐ軌道修正が出来ると思います。
あとは何より健康第一なので、美味しいお味噌汁と肉じゃがの作り方を知っておくと良いです。周りの人にも喜ばれます。
ー インタビューにお答えいただきありがとうございました。
藤田美希子 / Mikiko Fujita プロフィール
1986年千葉県船橋市生まれ。多摩美術大学絵画学科油画卒業、ライプツィヒ視覚芸術アカデミーブックアート科イラストレーションクラス聴講生、ミュンヘン造形芸術大学ディプロマ取得(Karin Kneffelに師事)。
2014年ボローニャ国際絵本原画展入選、2016年より鳥取市鹿野町へ移住。その後、鹿野で芸術祭を開催しながらアトリエを構え制作活動を行う。2020年ノルウェーの風土のリサーチを兼ねKHmessenにて滞在制作を行う。
藤田美希子絵画展「forest」概要
タイトル | forest |
会期 | 2020年7月15日(水)〜7/26日(日) |
会場 | アートセンター・オンゴーイング 〒180-0002 東京都武蔵野市吉祥寺東町1-8-7 |
時間 | 12:00-21:00(定休:月、火) |
info@ongoing.jp | |
入場料 | ¥400(セレクト・ティー付き) |
URL | ongoing |