横尾忠則作品の番外編-完成以前のデザイン表現プロセスーに焦点を当てた展示会
ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg)では、「横尾忠則 銀座番外地」と題した企画展を2023年5月15日(月)から6月30日(金)まで開催している。gggでは、これまで、横尾のグラフィックデザインの真髄を、ポスター、ブックデザイン、挿絵の3つのジャンル(章)で展覧してきた。4回目となる今回は、満を持して、ここ銀座で、「デザインのプロセス」という横尾作品の番外編に焦点を当てる。
「これからが本番です」― この言葉は、今年の2月、横尾忠則が日本芸術院で新設された<建築・デザイン>分野の会員に選ばれた時の決意表明である。「43年前に画家宣言をされた横尾さんがなんでデザイン分野なの?」 という疑問も残ったが、100年を超える歴史を持つ日本芸術院の古い体質に、風穴を開けるような事件ではなかっただろうか。
本展では、横尾が日本芸術院に選出された主な評価理由「文学、演劇、音楽、映画、ファッション等、様々な分野に活動の場を拡げた43年前のデザイン」(1960~80年代)に焦点を当てることになった。ただしその対象は、完成品のポスターや書籍ではなく、作品を構成するラフスケッチ、アイデアノート、デッサン。表現エレメントとしてのドローイング、原画、コラージュ。版画やポスターを仕上げるための版下、色指定紙等々、作品完成以前の膨大な「デザイン表現のプロセス」である。横尾と親交のあった高倉健が主役の映画『網走番外地』になぞらえば、「横尾の仕事の番外の地」と言っても良いだろう。
これらの資料や作品は、横尾忠則現代美術館のもとですでに約80箱に収納・整理されていたが、実物に触れる前に資料や作品、収納状況の記録写真18,000点余をチェック。さらに展示のための250点を厳選するのに約2,500枚の出力の山と対峙した。そのうず高く積み上げられたコピー紙の山は、すでに「ヨコオアート」の源泉で溢れかえり、「ヨコオアーカイブ」という名のカオス状態。そして、それらを「丸呑み」することによって、今回の企画展の扉が開いたのである。
今回大々的に展覧するスケッチや原画、版下等が並ぶ展示空間は、横尾の手のぬくもりを感じさせ、見る人に頭ではなく肉体的体験を約束する。それはブラックホールのように、今まで見えなかった横尾の創造空間に引き込み、吸収し、消失してしまうような、「無」の境地に誘う。いまだ生成し活動し続ける横尾の超私的ブラックホール。その渦中「番外の地」に迷い込んでしまえば、横尾の表現の原点・原郷に到達、遭遇できるかもしれない。
「横尾忠則 銀座番外地 Tadanori Yokoo My Black Holes」開催概要
会期 | 2023年5月15日(月)~2023年6月30日(金) |
会場 | ギンザ・グラフィック・ギャラリー |