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古民家を住み継ぐ

陶芸家と料理家の夫婦、幼い子供たちの4人家族のための住宅である土田の民家。敷地周辺には同じく茅葺き屋根の上に金属板を葺き、現代まで住まれている古民家が数軒点在している。raumusの竹田真志は民家の在り方を継承した上で現代的なライフスタイルに合うように大きく間取りを変更することで、古い、新しいという枠組みを超えて、現代における民家の形をこの家族を支える生活の器として蘇らせたいと考えた。adf-web-magazine-oomori-residence-14

土間と広間

夫婦は仕事上の来客が多く、日々の生活と仕事が連続した暮らしをしていた。 陶芸家である夫は、日中はアトリエで制作を行い、作品を直接見にくる来客の対応がある。妻は人を集め、大勢にご飯を振る舞う機会も多い。そこで制作や来客のスペースである土間・畳間、日中の生活スペースである広間、就寝する寝間の3つのスペースとして再構成した。土間と広間部分は3枚引戸で仕切られているが、その建具を開け放つと50畳ほどの一室空間となる。屋根形状に沿った寄棟形の天井は頂部で4m程あり、非常に大きな空間である。住宅としての機能を超えた、仕事場のようでもあり、地域の集まりの場にもなるような自由で新しい未来の住まいのかたちを考えた。adf-web-magazine-oomori-residence-8

自然豊かな場所でのおおらかな暮らし

建物竣工時に全てを完成させるのではなく、住みながら考え、その時々で適切な暮らしができることを第一に考え、子供達が小さいうちには子供部屋は作らず必要に応じて将来、既存の構造材を利用して簡易に部屋を間仕切れるような構成となっている。陶芸のアトリエを敷地内に併設し、土間部分を子供部屋としても使えるよう想定しており、将来のライフスタイルの変化に対応できる形としている。adf-web-magazine-oomori-residence-4

adf-web-magazine-oomori-residence-15人と環境にやさしい温熱環境計画

今回の工事ではサッシは全て新しいものに取り替え、壁や天井は全面に断熱材を充填し断熱強化を行なった。広間は頂部で4m程の高さがあるため冬季の暖房はエアコンではなくヒートポンプによる温水式床暖房と山が多く、ストーブ用の薪の手配も容易であるため、薪ストーブを併用。断熱効果の高い茅葺き屋根の下に今回の工事で天井部にも断熱材を入れたことにより、夏季の猛暑日以外はエアコンをつけることなくことなく快適に過ごせる。全熱交換器により、熱ロスを抑えながら効果的に換気を行い、古民家の雰囲気に合う大袈裟ではない設備を使いながらも快適な温熱環境となるように計画されている。adf-web-magazine-oomori-residence-9adf-web-magazine-oomori-residence-10

古くもあり、新しくもある

古民家の改修に際し、新旧の部位を対比、もしくは同化させる方法は避け、既存の柱や丸太の梁など時を重ねてきたモノの存在感に対して木やモルタル、スチールなど様々な種類の素材を付加することで、どこまでが新しくどこまでが古いのか解らないような状態を目指した。現代的な住まい方を実践しながらも、「古いものの持つ味わいを楽しみたい」というクライアント要望に対し、それらを併存しながら調和することが取り入れられている。adf-web-magazine-oomori-residence-13adf-web-magazine-oomori-residence-11

raumusについて

raumus (ラウムス)は、ドイツ語でRaum (空間)とMuster (デザイン)を合わせた造語。日本、ドイツ、スイスの3カ国の設計事務所に勤務した後に独立した竹田真志が主催する設計事務所。福岡を拠点に土地、物件探しから企画、設計、家具製作、空間を作るプロセスまで空間に関わる様々なことをデザインし、自由で新しい、未来の空間のかたちを提案する。