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ベルリンとブランデンブルク国際空港とグリッドと

私の住むベルリンは、コロナ禍により11月からハードロックダウンとなり、スーパーや薬局を除いた、生活必需品以外を扱う店は閉店している。また公共機関や施設内では医療用マスクの着用が義務付けられた。移動すらもはばかれる状態ではあるが、2020年10月にベルリンには新しい空港が開港した。今回はベルリンに新しくできた空港、ブランデンブルク国際空港を紹介する。

ベルリン・ブランデンブルク国際空港(Berlin Brandenburg Airport)2020-

ベルリン・ブランデンブルク空港は、ベルリンの郊外のブランデンブルクに建設された国際空港。別名「ヴィリー・ブラント」といい、元西ベルリン市長・西ドイツ首相であったヴィリー・ブラントにちなんで名付けられた。設計はベルリン中央駅も手掛けたドイツの設計事務所gmp Architektenによるもの。

ターミナル1は、2020年10月31日に開港され、2020年11月8日に閉鎖されたテーゲル空港に代わるベルリンの国際空港となった。ベルリンには4つの空港があり、テンペルホーフ空港、テーゲル空港は都市部に近く、拡張は不可能であったことから廃港され、郊外にあったシェーネフェルト空港の隣接地に、ブランデンブルク国際空港が計画され、シェーネフェルト空港はブランデンブルク空港のターミナル5となった。これによりブランデンブルク国際空港がベルリン唯一の旅客空港となった。

2006年の起工式では、2011年10月に開業する予定であったが、2012年6月3日に延期された。また防火システムの問題、不十分な管理、不適切な計画、建設の失敗、構造上の欠陥により、さらに開業を延期することが発表されていた。メインターミナルの建築技術のセキュリティ問題が深刻化しており、開港日が数回に及び延期され、空港は長い間稼働できなかった。2020年4月にようやくすべての正式な承認が得られ、同年10月31日に空港が9年遅れで開港することとなった。

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ドイツの都市間移動で利用する、赤い二階建て快速列車レギオナルバーンで、ベルリン中央駅から空港まで約30分ほどである。コロナ禍であり利用客はまばらであった。

駅名標のFlughafenはドイツ語で空港、 BERはブランデンブルク空港の空港コードである。よく見ると左下には「Willy Brandt」と空港の副名称がきちんと書かれている。

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駅のホームを上がり連絡通路階を抜け、空港の1階に上がると、赤いオブジェがチェックインホールの天井の下に浮かんで見えるのが印象的である。カリフォルニアのアーティストPae Whiteによるアート作品「THE Magic Carpet」 である。この空飛ぶ絨毯は約1,000㎡の面積を覆っているという。空港は芸術を発表するのに最適な場所とされ、様々なところにアート作品が設置されていた。

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目立つ赤い空飛ぶ絨毯の真下にはインフォメーションが配置されている。全体的に空港ターミナルの利用客はわずかであり、スタッフの方が多いくらいであった。

天井を見上げると、規則的な正方形グリッドの大屋根を、高さ約30mの十字断面の鉄骨柱が支えており、開放的な空間をつくりあげている。

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車やタクシーの車寄せまで大屋根が張り出しており、ここも室内と同じグリッド間隔で柱が配置されている。内部と外部を隔てる壁は全面ガラス張りになっている。ベルリンに建つ、ミース・ファン・デル・ローエ設計の新ナショナルギャラリーを思わせる設計である。

建築家によると、基本構想は、6.25メートルのグリッド上で設計されたという。これに7を掛けると、43.75mのモジュールになり、これは最も頻繁に使用される航空機エアバスA320に必要な駐車幅に対応しているとのこと。

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設計マニュアルは、都市設計の側面から主軸、寸法システム、建物の容積、材料、色、家具に至るまで、機能的で芸術的な設計コンセプトを確立しているとのこと。人間のスケールに分解し、大きな建築要素から空間構造、そして天然石の床のパターンなどの細部に至るまで、あらゆるスケールで設計コンセプトを体験することができるようになっている。

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看板の主な配色は、オレンジレッド・バイオレットレッドになっており、3000以上の標識が壁に組み込まれるか、床から立った状態で設置されている。他の多くの空港とは対照的に、吊り下げ看板を使用しないことで、ホールの大空間がすっきりし、鉄骨柱によって支えられた大屋根とガラス張りの壁によって、開放的なパノラマが広がっている。

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カフェも持ち帰りのみとなっており、利用客も少ないため、空港らしい賑わいはなかった。空港内の家具や壁は木製パネルで装飾されており、壁と大理石の床もきれいにグリッドに沿った設計となっていた。あらゆるところで扉や収納などが、パネル目地に沿ってきれいに収まっていた。

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隣接するチェックインカウンターも、同様にグリッドに基づいた設計であった。ターミナル1からターミナル2への地下連絡通路も、上階同様のグリッドであることが見て取れる。ターミナル2の建設は2017年夏に決定され、2020年夏に完了したが、コロナ禍により航空交通量が少なくなったため、まだ運用を開始する予定はないようで、入ることはできなかった。

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俯瞰図を見ると、ブリッジの間隔や柱の位置が、基本構想であるグリッドに基づいた設計であることがよくわかる。ターミナルビルは、2つの滑走路の中間にあり、幅220m、長さ180m、高さ32mで、延床面積は22万m²である。空港名にもなっているヴィリー・ブラントは元西ベルリン市長・西ドイツ首相であり、東西ドイツの緊張緩和を進め、両ドイツ間の懸案を少しずつ解決していくことを示し、1971年ノーベル平和賞を受賞した人物である。ブランデンブルク空港の壁には彼の顔のレリーフと言葉が刻まれている。

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地下の連絡通路階にはショップが並んでおり、展示スペースも設置されていた。「DER RAUM VOM FLIEGEN(航空の部屋)」では、ベルリン・ブランデンブルク空港の開発と航空史について展示されているようである。残念ながらコロナ禍により閉鎖したままであったが、今後のブランデンブルク空港のブリッジの拡張予定やターミナル3の建設予定などが記されていた。

9年遅れでやっと開港したブランデンブルク国際空港であったが、コロナ禍により利用客の大幅な減少という新たな課題に直面しているのを、訪れてみて肌身で感じた。2020年のベルリンのすべての空港の乗客数は、2019年と比較して約74.5%減少したという。

普段であれば、空港や新しい建築を見に行く時はワクワクするのであるが、本来とは違う建築の様子をみて、いつもとは違う、不安にも似た感覚での見学であった。人が少ないのは、建築写真を撮るのには良いかもしれないが、やはり寂しいものである。

何にせよ、このコロナ禍が早く収まり、また自由に移動できるようになる事を願うばかりである。