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理想的な都市の姿とはVol.2

前回に引き続き、私なりに考えた「理想的な都市」の特徴を紹介したい。私がこれまで訪れた先駆的なまちづくりの事例では実に水辺や雨と上手く付き合っている。降水量、積雪量の多い日本にとっても参考になる取り組みだと思うで、いくつか紹介したい。

3. 雨水の管理・活用

先進国の水質汚染の主な原因は、地表のゴミや車のオイルなどが雨で河川に流れ込むことだといわれている。都市はまた豪雨による洪水や、河川の氾濫などの災害とも向き合わなければいけない。一方で上手に活用すると雨は多くのメリットをもたらしてくれる。

ウォーター・センセィティブ・アーバン・デザイン(Water Sensitive Urban Design)、持続可能な市街地排水システム(Sustainable Urban Drainage - SUDs)、スポンジ・シティー(ベルリン)などの都市政策をご存じだろうか。

自然の水の循環を活用した洪水対策、ヒートアイランド対策、水質改善などを目指した複合的な政策である。日常の暮らしをより快適にし、上下水道や洪水対策などハードなインフラの負担を減らし、水関連の災害に強い都市の実現を目指している。

では具体的にどんな取り組みをしているか紹介したい。

本来の自然環境では、地面が雨をスポンジのように吸い込み、ゆっくりと時間をかけて河川へ放出していく。

一方、都市ではアスファルトやコンクリートが地表の大部分を覆っている現在の都市では、雨水が短時間に河川に流入するようになった。その結果、河川の水質が悪化しやすくなり、河川の氾濫や洪水のリスクも高まった。

そこで、都市でも自然界の水サイクルを再現させようという考えが広まった。例えば、道路や駐車場の舗装をレンガ、石、砂利や穴の空いたコンクリートブロックなどを使用して浸透性を高める。敷地を全て舗装するのではなく、一部土の部分を残し、植木や街路樹を植る。土の部分を周囲より低く設計することで、そこに周囲から雨が流れ込み、水溜りが小さな貯水ダムとして機能してくれる。

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浸透性のある駐車場のブロック

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メルボルン郊外の駐車場 緑地部分に水が溜まるようになっている。

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メルボルン・St Kilda 街路樹が歩道より低い位置に植わっており、道路の雨水が流入する

ストックホルム・Royal Seaport緑地帯が道路と歩道よりも低い位置に設置されている

ストックホルム・Royal Seaport緑地帯が道路と歩道よりも低い位置に設置されている。

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ストックホルム・Royal Seaport

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ロンドン・Kings Cross

同様に建物の屋根に降り注いだ雨が花壇や植木に流れ込み、(お花は水没してしまうが)地下浸透や一時的に水を貯えることで、自然に近いサイクルを実現させる。もちろん、歩道や道路に水があふれ出ないように、高い位置に排水口が設置されている。)

このように舗装された面積が少なく、土や緑地、水面で覆われている面積が増えると市街地や建物の間に発生する熱が抑えられ、ヒートアイライド現象の発生を抑制することもできる。

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マルメ・Vastra Hamnen 町中に雨水を貯めてできた小川や池がある。

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マルメ・Vastra Hamnen

私が以前アーバンプラナーとして働いていたメルボルンの自治体では、住宅を新築する場合、舗装してよい敷地の割合の上限が定まっている。水の浸透性(permeability)の高い舗装材を使用するとある程度緩和される。

また、夏の水不足が深刻なメルボルンでは住宅を新築する場合、雨水タンクの設置が義務付けられている。床面積によってタンクのサイズが異なるが、トイレ、植木の水やり、洗車などに利用しやすいように設置されている。

災害の多い日本では雨水タンクの設置は特に有効な対策だと思う。最近はフィルターが進化しているので、災害時の飲料や調理にも利用できるのではないか。

この他にも池や小川を人工的に造ると、生態系に影響を与えず、ミニ・ダムとして洪水の発生を防いでくれる。平時はリクリエーションの場として活用できる。建物の屋上緑化の進化版として屋上湿地(rooftop wetlands)という取り組みも最近広まっている。建物冷却の効果に加え貯水機能が加わるので、通常の屋上緑化よりも環境にやさしい。

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ロンドン Mile End Park

池や屋上湿地を設置しなくても、貯水機能を一般的な都市インフラに持たすこともできる。例えば、オランダ・ロッテルダムのBenthempleinでは学校の校庭のバスケットボール・コートが豪雨の際の貯水ダムとして機能するように設計されている。

広場やスケボーパーク、サッカー場などの事例がたくさんあるので、ぜひ参考にしていただきたい。

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ロッテルダム Benthemplein

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ロッテルダム Benthemplein

もう一点、ベルギー・ヘントのReep Riverという市内を流れる運河の再生についてお話したい。1960年代に道路や駐車場用地として埋め立てられた運河が近年復活したそうだ。市内の魅力創出が主な目的だったそうだが、ヒートアイランド対策にも効果があり、運河がたくさん水を蓄えられるため、豪雨の際、洪水の発生を防ぐことにも役立っているそうだ(日本の都市の埋め立てられた運河もこうした利点を再考し、復活してほしいものだ)。

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ヘント Reep River 過去 出典: https://bit.ly/3rBghNR

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ヘント Reep River 現在 出典: https://bit.ly/3rEci31

このように、雨水と正しく向き合うことは都市を安全かつ快適にするために不可欠なことである。