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ストリートアートシーンのカリスマ

KAMI個展「1999」が、SNOW Contemporaryで2023年12月8日(金)から2024年2月10日(土)まで開催される。日本のストリートアートシーンの創成期から現在まで、多くのアーティストにリスペクトされ、カリスマ的な存在であり続けるアーティスト・KAMIにとって約6年ぶりの個展となる。

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「Untitled」 2023年、キャンバスにペンキ 、高370 x 幅600㎜ / ©️KAMI ©️HITOTZUKI, Courtesy of SNOW Contemporary

KAMI(カミ)は、SASU(サス)とのユニットであるHITOTZUKI(ヒトツキ)のアーティストとして知られているが、HITOTZUKIとして制作活動を始める1999年以前よりソロアーティストとして活動をおこなっていた。本展「1999」はKAMI自身が、2000年代に向けた希望で満ち溢れていた時期、多くの出会いから現在の曲線を活かした作風が確立されたという印象的な1999年を回顧する思いを込めた展示となる。

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「Untitled」1999年、ペンキ、ノースカロライナ BARNSTORMERSにて / ©️KAMI ©️HITOTZUKI

日本の伝統文化が残る京都で育ち、スケートボードカルチャーに影響を受けたことによって生まれたKAMIの描く力強いラインは、「余白」や「間」といった日本的な要素とともに、当時具象が主流であったグラフィティシーンに独特な抽象をとり入れ、大きな影響を与えた。それまではスプレーを用いたアルファベット文字や西洋的な絵柄が描かれることが多かったグラフィティに対し、ペンキやマーカーで日本的な要素と西洋のストリートカルチャーを融合させたKAMIの登場は、当時のシーンに強烈なインパクトを与えた。KAMIの存在は「グラフィティ」から「ストリートアート」へと多様な表現を展開させるその転換点のまさに中心にあり、KAMIの表現は個々のアーティストへの影響はもとより、日本のグラフィティ/ストリートアートのシーン自体を大きく更新した。

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「Untitled」 2023年、キャンバスにペンキ 、高700 x 幅430㎜ / ©︎KAMI ©︎HITOTZUKI, Courtesy of SNOW Contemporary

1990年代後半、KAMIはアメリカで、現在のストリートアートから発祥したミューラル(壁画)ムーブメントの始まりとも言えるBarnstormers (バーンストーマーズ)に初期メンバーとして参加したことで、現在の表現にいたるヒントを得たという。その後、SASUと共にヨーロッパ各国のミューラルムーブメントに参加し、2004年にはイギリス URBIS美術館にて開催された「Ill Communication Ⅱ」に出品し、HITOTZUKIとしての活動が本格化。日本においてもストリートアートの発展に繋がった中目黒のオルタナティブスペース「大図実験」(2001-2005年)の主要メンバーとして活動。2005年には「X-COLOR / Graffiti in Japan」(水戸芸術館現代美術センター)、2010年には「六本木クロッシング:芸術は可能か?」(森美術館)に参加し、スケートボードのセクションを用いたインスタレーションで話題を呼んだ。

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「Untitled」2009年、ペンキ、東京 / ©️KAMI ©️HITOTZUKI   Photo by Naohito Nishiyama

KAMIの作品の最大の特徴は、前述した「ライン(曲線)」と独特の「間」にある。KAMIの描くミニマルなラインは内側と外側を分ける類の線ではなく、軽やかなリズムとフローによって周囲の空間を異化しつつも調和させる特殊な魅力に溢れている。本展「1999」ではKAMIの原点とも言えるこの時代の貴重な資料を公開するとともに、当時の熱量や現在にいたるまでの表現が融合した新作キャンバス作品を約10点展示する。

現在、ストリートアートのシーンはかつてのアンダーグラウンドでマイナーな存在から、 世界のアートの一端を担う役割を果たすようになった。多くのアーティストにリスペクトされながらも一般にはあまり知られていないアーティストを「Unknown Famous Artist (知られざる有名アーティスト)」と呼ぶことがあるが、アート界においてKAMIはまさしくその一人かもしれない。

KAMI 「1999」に寄せて 

KAMI君の描く線は昔も今も、オリジナルであり謎である。言い換えれば、かっこいいし面白い。それは90年代後半、路上で生まれた。僕たちは皆、「線に痺れる」という体験をした。
KAMI以降、同じような線を繰り返して描くアーティストが急増したのも無理はない。彼を間近で見ていた僕自身も深く影響を受けたが、個人的には逆に「線を繰り返さない」方向へと進んだ。誰もKAMIにはなれないからである。
それから20年以上が経ち、分かりやすい「ストリート風の線」がすっかり現代アートのメジャーな戦略ツールとしてInstagramを賑わせているが、現在もKAMI君は生活のなかで淡々と線を生み出し続け、必要以上に説明することもない。そこには力強い静けさがある。J DILLAが刻むビートのように、彼の故郷にある龍安寺の石庭のように。
KAMIは自らの描く線が、自分よりも大きな何かの一部であることを知っている。その線は過去と未来を貫いてどこまでも続く、辿り尽くせない道のようだ。だから今も、僕たちはそこにある謎に痺れるのである。 鈴木ヒラク(アーティスト)

KAMI「1999」開催概要

会期2023年12月8日(金)〜2024年2月10日(土)
時間13:00 - 19:00
休廊日日・月・火・祝日、2023年12月24日(日)〜2024年1月9日(火)
会場SNOW Contemporary
料金無料
URLhttp://snowcontemporary.com/index.html